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【森林組合長にインタビュー】小国杉ブランドを熊本から全国へ!~斬新なアイデアで付加価値をつける~

小国町森林組合にて、魅力溢れる「小国杉」ブランドを全国へ届ける取り組みを行っている北里さん。学生目線で質問しながら、日々の活動の裏にある思いをお聞きしていきます。

人物紹介

<話を聞いた方>


北里 栄敏(きたざと ひでとし)さん
小国町森林組合 代表理事組合長
熊本県阿蘇郡小国町出身。高校まで熊本県内で過ごし、その後東京農業大学に入学のため上京。地元が恋しくなり、大学卒業と同時に熊本に戻る。小国町役場に勤務したのち、家業の林業を継承。その後小国町森林組合の理事に就任。2020年に代表理事組合長に就任。

<インタビュアー>


谷口 こころ(たにぐち こころ)
熊本県熊本市出身。熊本県立大学文学部3年生。キャリア教育分野の個人事業主として活動中。漫画を読むのが好きで最近は「ジョジョの奇妙な冒険」にハマっている。


森林組合を知ろう

谷口:本日はよろしくお願いいたします。早速ですがまず「森林組合」とは普段どのような活動をされていて、どのような仕組みの組織なのでしょうか? 大学生活の中で耳にすることがないため、あまりイメージが湧いておらず…

北里さん:基本的に森林組合は木材等の製材を調達・販売するのが主な活動です。森林組合は農協のような協同組合で、自治体の組合員の中で山を持っている人(林業に携わっている人)が集まり、その中から理事や代表理事を決定して組織を運営しています。全国に約600組合ほど存在していて現在熊本県内には15組合あります。昔は一町村一組合という状態で今より多い組合数でしたが、合併の影響で数が減りましたね。

谷口:なるほど、600もの組合数があるというのは驚きました。山の少ない都市圏以外であれば自分の住んでいる自治体に存在している可能性が高い、思っていたよりずっと身近な組織なのですね。

小国杉のブランディング

谷口 : 森林組合に関して大まかに話していただきましたが、次に小国町森林組合さんにしかない特徴や魅力をぜひお聞きしたいです。

北里さん : 実は小国町の森林組合は全国でもかなり稀な組織で、本来行政がやるような取り組みをしたり、有名なブランド材である「小国杉」を活用した製品開発・販売をしたり、あるいは全国に先駆けた取り組みを行ったり…いろいろしています。
まず、行政がやるような取り組みとしては、実は国土調査を代行しています。私たちが住む小国町は森林面積が85%です。町のほとんどが森林だからこそ、うちの森林組合は優れた山のプロフェッショナルとして調査業務を行っています。

次にうちの森林組合は企画販売、いわゆる営業部門がありまして…

森林組合が企画販売している製品を見せながら説明してくださる北里さん

谷口:製品を見せていただきありがとうございます。来た時からすごく気になっていました(笑)。

北里さん:例えば、小国杉の端材からできた木糸を使用した布の製造や販売をしています。この布は50%が木糸で50%が綿で、合計100%天然素材のものなのです。ピンク色がついているものは桜の木のエキスを抽出して染色しており、とにかく天然素材から作り上げることにこだわっています。とはいえ、布に押しているスタンプの黒インクが天然素材ではないため、インクも自分たちで作ってしまおうと思い現在木糸コーディネーターと計画を進めています。

実際に布を触る谷口
撫で杉

谷口:雨の日でも遊べるアクティビティとしてひたすら木を削り、ツルツルの木を作る「撫で杉」その他にも素敵なアイデア製品をたくさん見せていただきました。

谷口:どの製品もコンセプトがとても素敵です。こういった新たな事業に積極的に取り組む姿勢には何か理由があるのでしょうか?

北里さん:理由としては「製品を作るための材料」ではなく、「製作の過程で捨ててしまうもの」からさらなる価値を生み出すことにあると思います。わかりやすい例でいえば、木材の製造過程で捨ててしまう杉の葉からアロマオイルをつくりました。全国各地から問い合わせがくる小国杉の木材ですが、その木材に合わせて「小国杉」ブランドの価値をより高めるプロダクトの開発に力を入れています。

実際に販売しているアロマオイル

谷口:ここまでお話を聞いてきて、ブランディングへの熱量とそのブランドにふさわしい商品の品質の高さがわかりました。ところで、先ほど全国に先駆けた取り組みがあるとおっしゃっていましたが…

北里さん:そうですね、こちらがそうです。

スマホを見せていただく

谷口:入札…木材の入札ツールでしょうか?

北里さん:はい、アプリです。木材の入札は従来、紙の入札表を使用しており、さらには自分でどれぐらいの木材の量をいくら購入したかを覚えておかなければなりませんでした。ですが、このシステムを開発して、すべてをデータとしてまとめて無駄な紙を無くし、かつ後から確認できるようにしました。それともう一つ動いている県の補助金事業プロジェクトがあって…ペーパーレスが謳われる昨今ですが、森林組合としては紙の材料は木ですから、紙産業を残していくための取り組みとして絵本を作り、絵本の読み聞かせをして森の大切さを子供達に伝えてくれる団体等に絵本をプレゼントしています。

実際の事業資料を見せていただく谷口

谷口:無駄なところは省いて、残していくべき資材は残しつつ地域に還元する。お話を聞いて、バランスを保つための新たな取り組みとその思いの実現のための実行力が大切だとひしひしと感じました。

森林組合と人とのつながり

谷口:これまでたくさんの製品や思いが詰まった企画をお話していただきましたが、これは地元の方かつ地元愛が強い方だからこそできることなのでしょうか?

北里さん:もちろんそれもあるとは思います。ですが一番は、地元外の人や、僕もそうですが地元を一度でも離れた人が小国町もしくは小国杉の魅力を感じてくれて、そこから新たなアイデアが生まれていると思います。例えば企画販売部門で活躍している女性は高知県出身ですが、小国杉の木材に魅力を感じて今ここで働いてくれています。僕が言わなくても勝手に魅力を言いふらしてくれています(笑)。

谷口:高知県ですか!そこから移住してくるだけの価値を小国杉に感じていらっしゃるということですね、採用ブランディングのかなりの成功事例ですね。
これまでの話を聞いてきて林業がずいぶん身近に感じられるようになってきましたが、日常生活で林業はどのように私たちに関わっているのでしょうか?

北里さん:一番は木材製品ですが、正直なところ日頃の生活において木材はあってもなくてもいいものです。代替する素材はたくさんありますからね。ですが私たちは木にこだわりを持って生き物として接しています。気温・湿度・加工法…様々な要因によって変化するものですから、その木材の魅力を扱うプロとして私たちは存在しているのだと思います。

熱く語ってくださる北里さん

谷口:なるほど。仕事に対してのプライドやこだわりが私たち学生世代には特に縁が遠いものに感じていましたが、お話を聞いて身近なプロダクトに込められている誇りから勉強できることは多いことがわかりました。特に小国町森林組合で行われている事業は若者の関心が高いマーケティング分野が重要なものですから、参考になる点も多いのかなと個人的に思います。

北里さん:そう言ってもらえると嬉しいです。採用や人材の観点で言うと木こり…いわゆるフォレストワーカーの待遇をよりよくしていきながら、3K(きつい・汚い・危険)のイメージを払拭し、かっこいいイメージに改善することが大事だと考えています。林業に関わる人間を増やすとまでは言わずとも、一定の人数を保って次の時代へ継承していきたいです。

谷口:そうですね。最後に、北里さん視点で林業に携わる人に求められるものは何とお考えでしょうか?

北里さん:うちの組織で言うと、企画職であればアイデアを生み出せる発想力…ありえない角度から物事を見られる一種の変態性だと思います。
木を扱う現場職(木こり)の仕事であれば扱う機材が大きく、事故があると命に関わる大きな怪我につながりかねないため、その危険性を理解して慎重に取り組んでくれる人材に魅力を感じますね。

谷口:リスクを顧みて動ける人材は確かにニーズがありますよね。ありがとうございます。
今回の取材を通して、小国杉にかける情熱に伴った発想力・実践力のすばらしさと、情熱を持って楽しそうにお仕事をされる北里さんの姿がとても印象に残りました。ぜひ他の学生にもこの魅力を知ってもらいたいです。取材ご協力誠にありがとうございました。

撫で杉 by かける木工舎


小国町森林組合では低炭素社会に貢献している250年続く森づくりを
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 文:谷口 こころ
編集:溝尻 亜由美
写真:山脇 竜馬


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