月夜の下で

お題:月明かり、星の向こう側

――夜、真っ暗闇の中に光があるとするなら、それはお月様のあかり。

「今日も月を見てるの?」
「うん、今日は満月なんだ」

ヒナタは窓辺に座るカゲロウに近付き、彼の隣に座る。

名前に“カゲ”という字が入っているからなのかは分からないが、彼はいつも黒い服装をしている。

月の光が、2人をぼんやりと照らす。

「月を見て、何を考えてるの?」
「何も。ただ、夜だなあって」
「……そうだね、夜だ」

カゲロウは一度も月から視線をそらそうとしない。

ヒナタはそれにならって、月を見上げた。
そこには、月だけではなくて、他の無数の輝きも散らばっていた。

「お星様だ」

ヒナタは呟いて、手をのばそうとする。
不思議と、掴めそうな気がした。
すぐそこで、きらきら輝く星。

「ヒナタ、危ないから」

カゲロウがヒナタの腕をつかむ。
我に返った彼女は、おとなしく再びカゲロウの隣へと座った。

「ねぇ、カゲロウ」
「なに、ヒナタ」

窓枠に背を預けたヒナタは、カゲロウに笑いかけた。

「明日は、どんな1日になるかな」

ヒナタの問いに、カゲロウは一度目を閉じると、今度はヒナタのほうに顔を向けた。

それから、少しだけ、開いた目を細めて。

「きっと、楽しい1日だ」

夜がすぎれば、朝がくる。
お昼がすぎれば、夜がくる。

そうしたら、また。
月と星とを眺めるのだろう。

カゲロウはそんなことを思いながら、月明かりの下、ヒナタと星が散らばる夜空を眺めていた。

#小説 #SS

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