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saṃsāra

フジテレビ『ザ・ノンフィクション』ある回の話。

密着されてるのはフジタという40代のゲーム配信者。

かつて自分を捨てた高齢の父親(かなり認知症が進行している)の面倒を見てます。

父はフジタが何度言っても勝手に出かけて保護されたり受給した年金を女の人に渡したりクレジットカードの契約を申し込んだり無断で買い物に出かけて転んで骨折して救急車で運ばれたりと好き放題。

フジタはそんな父に辟易しながらも懲りずに言い聞かせ、父が見て思い出せるように家のそこかしこの壁にガリレオぐらいメッセージを書き残します(直書き)。

あまりにも父が言うことを聞かないので、怒りと苛立ちから物に当たることもありました。

介護用?の見守りカメラを自宅に置いて父の様子を確認するのですが、「絶対に勝手に自転車に乗ってはいけない」ときつく言ったにも関わらず、ある日父が自転車で出かけた形跡を発見します(しかも通帳も持ち出してる)。

視聴者は見守りカメラの映像で、夜遅く帰宅したフジタがそこに落ちているはずのない自転車の鍵を拾い上げる様子を見ます。

ぢっと自転車の鍵を見るフジタ。

スマホで自分が不在の間の見守りカメラの映像を見て父の行動を知るフジタ。

5分にも感じる数秒の後、フジタはノーモーションでフスマを蹴破りました。

あのときのレミー・ボンヤスキーぐらい腿が上がってました。

いったん日本の高齢社会問題および介護問題、認知症の予防薬が云々の話はぜんぶ横に置きます。

何が言いたいかって、 前フリ、情動、衒いの無さ、見せ方(見守りカメラの映像)、音の粗さ、お父さんが通帳持ち出すとき流れてた子供向けアニメで泥棒が出てくるときみたいなBGM、取材期間の長さ、間、すべてが掛け合わさっておもろすぎたんです。

配信者冥利だと思いました。

これまでの人生の後悔、これから生きていくことの辛さが万華鏡のようにグルグル回って、覗いた筒の中に無数に配置されたガラス片や色紙の欠片のうち1枚にフジタのノーモーション襖ダイナミックエントリーが映ってて笑えるなら、それは人間冥利だと思いました。

すでに2回見直しました。

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