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お前を消す方法

それは家電量販店を訪れた時のことだった。

スマホ売り場をのぞいてみると、熟年とおぼしきご婦人が若い男性店員と話していた。
どうやらご婦人がdo◯omoの格安プランであるa◯amoについて尋ねているようだった。

男性店員さんが「aha◯oは自分で設定しないといけませんから、ちょっと…」などと言っているのが聞こえた。

その時、私の中の武士もののふが目覚めた。

待たれい、そこな若者よ。
「ちょっと」の後はどのような言葉が続くのじゃ。よもや「あなたには無理ですよ」などではあるまいな?

よいか、性別や年齢だけでITに弱いと決めつけてなんとする。この女性にょしょうはもしかするとそなたより余程スマホに長けておるのかもしれぬぞ?

私はah◯moが始まってすぐ契約したが、大した手間ではなかったぞ。
その数年前にも自力で機種変と契約変更をしたが、普通にできたぞ。
なんとなれば私たちの世代は、君らがヨチヨチ歩きの頃からパソコンと格闘してきたのだ。
ITネイティブの君らとは違い、自宅にパソコンがあるわけでも教えてくれる人がいるわけでもないITジュラ紀を生き延びてきたのだ。
勿論苦手な方も多いだろうが、年配の方でも驚くほどの達人は珍しくない。

私が初めて使ったパソコンのOSは、MS-DOSだった。
知っているか?若者よ。聞いたことくらいはあるだろう。

大変だった。苦労した。

例えば、PC上で何かをコピーする時、あなたはどうするだろうか。
右クリックやCtrl+Cなど、その人によってやり方は違えど、ほぼ秒でできる作業だろう。
それが、MS-DOSのPCでは至難の業だった。ファイル名から指示コマンドまで、スペルや記号を1字も違えることなく入力しなければならないのだ。

カタカタカタ。これでよし。カチッ。

コマンドまたはファイル名が違います

間違えたか。
カタカタカタ。これならどうだ。カチッ。

コマンドまたはファイル名が違います

なんだと!
カタカタカタ。今度こそ!カチッ。

コマンドまたはファイル名が違います

PCを壊しそうになったのは私だけではないだろう。せめて、コマンドかファイル名かどっちが違うのかだけでも教えてくれ。


その後Windowsが出て、PCの機能性は格段に進化した。
私が初めて購入したマイPCは2000年発売のWindows Me(Millennium Edition)だった。

その頃のOfficeにはアシスタントキャラクターがいたのを覚えておられるだろうか。
有名なのが「イルカのカイル」くんだ。

画面右下に住んでいたカイルくん

操作についてわからないことがあれば答えてくれるキャラクターだ。
ところがこのカイルくん、画面上をうろちょろしたり突然ピチピチ跳ねたりして、けっこうウザがられた。
「何について調べますか?」との問いに「お前を消す方法」と入力する人が多いと、笑い話になったものだ(私も消した)。

私が好きだったキャラは「冴子先生」だ。

元祖萌えキャラ、冴子先生

この冴子先生、今見るとなかなか色っぽいおねいさんである。令和の今なら各方面から苦情が殺到しそうだ。


さて、スマホ売り場に目を戻すと、さっきの男性店員さんの姿が見えない。
もしかしたら、あのご婦人が「お前を消す方法」と検索して実行したのかもしれない。



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