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ターニングポイント①

私は天文が好きで、博物館の天文担当の学芸員という職に就いていて、プラネタリウムの投影をしたり、天文講座でお話したり、天文をテーマにした特別展を制作したりしているわけですが、その原点を振り返ってみたいと思います。

ただ、私はいわゆる実体験が乏しいんですよね。なので、皆既日食を見た、とか満天の星を見た、とか、その手の感動がいまに繋がっている、ということはあまり(まったくではないですが)ありません。プラネタリウムにしても同様で、プラネタリウムの投影(番組)を見て感動した、という記憶もほぼほぼないんですよね。じゃあ、いったいなにが?というわけで、これまでの人生におけるターニングポイントを思い出してみようと思います。

1.『銀河宇宙オデッセイ』
原点、というか天文に興味をもった最初のきっかけは正直なところ覚えていません。天文宇宙の図鑑も我が家にはなかったですし…強いていえば学研の漫画で『星座のひみつ』的な奴はもっていましたが…。でも、物心ついた頃には天文は”好きなものの一つ”だったのは確かです。小学校1年生のときにグループで紙芝居をつくる授業(?)があったのですが、そのときの作品が『たいようけいのたび』だったので(笑)今もその紙芝居は実家に残っているのですが、ちゃんと海王星の大暗斑が描いてありましたよ。ボイジャー2号の海王星最接近が1989年8月25日、紙芝居を作ったのが同年秋なので、最新情報を取り入れてますよね、さすがです(笑)ただ、その時点でそこまで天文を好きになっていた理由は思い出せません。同年齢の子どもらしく(?)、昆虫も恐竜も鉄道も好きでしたし。
天文学にはまった最初のきっかけとして覚えているのは、1990年にNHKが放映したNHKスペシャル『銀河宇宙オデッセイ』というテレビ番組です。
https://www2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009010365_00000
詳細は書きませんが、超新星爆発、ブラックホール、ハビタブルゾーン、宇宙の大規模構造、インフレーション、…。当時の天文学の最先端が詰まっていました。個人的にこれを超える、天文宇宙を扱ったNHKスペシャルはないと思っていますが、とにかく食い入るように見ていましたね。なぜか父親がビデオテープに録画してくれていたので(今でもそのテープはあるのですが…どうにかしたいですね、できるうちに)。もちろん、当時は内容の1割も理解できていなかったと思いますが、とにかく楽しかったんですよね。その後、何度も繰り返し見て、ちょっとずつ理解していきました。ある意味、自分にとってのバイブルです。

2.SL9の木星衝突
SL9とは、分裂した核が次々と木星に衝突したシューメーカー・レヴィ第9彗星のことです。SL9の木星衝突は1994年7月で、私は小学校6年生でした。1000年に一度ともいわれた天文現象をリアルタイムで追うことができたこと(ちょうど同時期に我が家に初めてインターネット回線が引かれた)、初めて望遠鏡を買ってもらった直後で衝突痕の姿を目の当たりにできたこと、などがあって非常に興奮したことを覚えています。後に指導教官となる渡部潤一さんを初めて認識したのもSL9を取り上げたCD-ROMに収録された映像を見てのことでした(当時の渡部さん、今の自分より4歳も若いんですよね)。科学としてもおもしろい現象だったので、宇宙の中でも特に太陽系に興味を持つようになったのは、このことがきっかけですね。
でも、この後しばらく、天文停滞期に入ります。中学生時代は、百武彗星やヘール・ボップ彗星の出現もあって天文界隈は盛り上がっていたはずですが(もちろん見てはいるのですが)、あまり記憶がありません。どちらかというと古生物や歴史、天文寄りだと宇宙開発の分野に興味が移っていました。

(続く)

画像credit:Dr. Hal Weaver and T. Ed Smith (STScI), and NASA

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