ホイールは外周が重い方が転がる?

どうしてみんなディープリムを使うのでしょう?かくいう私もレースでは(最近ではディープと言えない)40mmハイトくらいのカーボンホイールを使ってます。なんとなく速そうな気がしますし、かっこいいですし(^^)

一方、G社のハブとか、重いですけど、レースでは活躍してますよね? それで思い出したのが、トライスポーツさんの4年位前のニュースです。「回転運動に対する抵抗の大小」という記事がありました。そこで紹介されてたのが、この実験映像です。

動画はこちら

回転軸付近に重りを配置した場合と、外周に配置した場合で転がるスピードが違いますね!っていう映像です。一目瞭然です。

この記事がどういう文脈で書かれたのか覚えていないのですが、これだけ見ると、「ホイールの外周は軽い方が有利」と見えますよね。それで、そのときに、ちょっと力学の計算をしたんですが、結果のグラフを今日発掘しました。昔過ぎて、計算を思い出せないのですが (^^; 

何を計算したかというと、ホイールを剛体円盤(変形しない円盤)として、慣性モーメント(回転軸の回りやすさ、みたいな物理量)を変えたときに、転がるスピードがどう変わるか、というものです。

ここで、ポイントは抵抗を考えること、です。抵抗とは、空気抵抗や路面の抵抗で、転がるホイールはほっておくと、スピードが遅くなってやがて止まります。

ペダルを回さないかぎり、坂道を下っていくとやがて等速に落ち着きます。あるいは平坦でもペダルを踏まないかぎり、スピードは落ちていきます。これが「抵抗」の効果です。

上の実験映像のように、坂道を考えます。つまり、重力の効果で転がっていく、状況です。数式とかすっとばすと、計算結果はこうなりました。

縦軸がホイールが転がり落ちる速度、横軸が時間です。I = 1.0とか、2.0というのは慣性モーメントです。この図では単位を与えていませんので、縦軸、横軸の数字には意味がなくて、色のついた曲線の相互の違いをみてください

ホイールの外周が重いと慣性モーメントは大きく、ハブ付近が重いと慣性モーメントは小さい(全体の質量が同じなら)です。なので、I=1.0がハブが重い場合、I=2.0が外周が重い場合、に相当します。

さて、図から、4つのケースとも、時間がたつと同じ速度に落ち着くのがわかります。これは坂道を転がっているからです。大事なのは、速度の落ち方(減速)、あるいは上がり方(加速)が4つのケースでそれぞれ違う、ということです。下の曲線2本は、初速度=0の場合です。上の2本は、初速度がある場合

まず初速度=0の場合、外周が重い(I=2.0)の方がハブが重いケースよりゆっくりと加速していっているのがわかると思います。これが、上の実験映像です。これだけみると、ハブが重い方が有利なように思えます。

ところが、初速度がある場合(上のグラフだと初速度=10)、ハブが重い(I=1.0)は急激に速度が落ちていきます。外周が重いとゆっくりと速度が落ちます。つまり、外周が重い方が有利、です。

そう、結論は真逆になってしまうのです。これをいいかえると、

重量が同じなら、外周が重いホイールほどゼロ発進は不利だが、
ある程度スピードが乗って来ると減速しにくい

という、自転車乗りならみんな感覚的に感じていることです。実験映像はゼロ発進の場合だけを示しているので、ちょっとミスリーディングなんです。

結論は、「ホイールの得手不得手は状況による」でした(あんまりおもしろくないですね)

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