美星天文台が生み出した「空を見上げる」文化

こないだ、広島県福山市出身の後輩と話していて、彼が里帰りをしてきた時の話になった。
後輩は天文関係の友人というわけではなく、前職はホスト、というチャラいヤツである。

「美星町の天文台に行ってきたんすよww」
俺「ほう……お世話になってるセンセイがおるところやな……どうやった?」
「いや、天文台の中には行ってないっすwwww」
俺「どゆこと?」
「女連れて、いつも行く星を見るポイントがあるんすよww」
俺「じゃあ天文台の入場者数にはならへんやんww」
「いや、でも街灯とか条例があって、星がめっちゃキレイなんすよwwww」
俺「いや、俺その業界追ったわけやから、知ってるってwwww」
「でも、本当に星空キレイなんすよw」
俺「まあこの辺もキレイなわけじゃない?」
「そうですけどww」

こんな会話を通じて、美星天文台が、県境をまたいでも周辺住民にとって、よく知られた存在で、その星空を守る運動が「地域の誇り」になっているんだなあ、と知らされたわけです。

別の福山市出身の知り合いからも、井原市美星町の星空の話は、地元の自慢のように聞かされたことがあって、「あの辺では美星町の星空ってのは近くにある文化なんだなあ」と実感させられました。

岡山県井原市美星町には、平成の合併で井原市になるよりずっと前、平成元年に公害防止条例が制定されていて、その名の通りの美しい星空を保とうという活動はかねてから知られていて、平成の合併後も、この条例は堅持されたように、周辺市町村もその活動に理解を示しているわけです。

井原市だけじゃなく、その周辺にも(福山市は県境を挟んで井原市と隣接)、天文台があることで、星を見上げることが誇れる文化として根付いているんだなと。
天文台があって、星を見るために条例で街路灯とかも規制して……
入場者数だけではカウントされない、星を見上げる文化があそこにはあるんだな、と思い知らされました。

条例を制定して、という行政の動きに、周囲の自治体も呼応したからこそ、平成の合併後もその条例が残り、周辺自治体住民、さらにそのまわりのひとびともそれを誇りに思う、星空を見上げる文化が生まれたのだ。
もっといえば、条例を制定するまでに、そこで星空を愛したひとたちの不断の努力があったことも明らかであろう。

日本の「星空を見上げる文化」の先進地に、これから学ぶべきところは非常に多いだろう。
都市圏全体に息づく文化にまで成長した「美星町天文台」が、入館者数など小さなことで右往左往させられることなく、今後も地域の文化の誇りとして続いていくことを願ってやまない。


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