ドラえもん33巻 「ハリーのしっぽ」
国民的アニメとして知られる「ドラえもん」。
その連載は1969年(昭和44年)から30年間に渡って続き、時事ネタも数多く描かれている。
その中で、天文関係のネタとして知られるのが、
33巻掲載の「ハリーのしっぽ」である。
33巻の発売が1985年4月、雑誌「小学六年生」掲載が1984年7月。
1982年にハレー彗星が検出され、順調に地球に近づくとともに、天文ブームが盛り上がりつつあった頃の作品である。
あらすじとしては
・大掃除中、浮き輪を捨てるか残すか迷うのび太
・パパが「おじいさん(※のび太のひいおじいさん)から伝わる巻物」を公開
・「1986年に柿の木の根本を掘れ」
・ひいおじいさんがこの巻物を書いたのは1910年
・この時の様子をドラえもんとのび太が「タイムテレビ」で覗いてみる。
・ハレー彗星の尾が地球を通過した1910年、ひいおじいさんは「ハレー彗星によって地球の大気が5分間なくなるかもしれない」という話を聞く。
・ひいおじいさん「自転車のチューブを買ってこよう」
・スネ夫とジャイアンのおじいさん「良いこと聞いた、買い占めたぜ」
・のび太「浮き輪を届けてあげよう」
・何事もなく終わる
・ひいおじいさんが巻物とともに柿の木の下に埋めたのはこの浮き輪
・のび太掘り返す。76年分経年劣化した浮き輪が返ってくるww
1986年ハレー彗星の回帰は、ハレー彗星としては劣悪な条件ではあったが、1910年のハレー彗星かのような宣伝が為され、天文ブームが巻き起こった。
「ドラえもんにまでその話題が登るほど」といえば、まず1986年の天文ブームの空気感が、この作品の存在自体で分かろうというもの。
そして、1910年のハレー彗星についてのエピソードは児童向け小説「空気のなくなる日」(初出:1947年)を下敷きとしている。
これが藤子・F・不二雄氏14歳時の作品であることから、ドラえもんのこの作品は、藤子・F・不二雄氏が少年時代にこの小説に触れたことから描かれたものと思われる。
「空気のなくなる日」を幼少期に見た元少年の記憶が「ハレー彗星ブーム」と壮大な空振り(空振りするのもわかってた)を産んだのだろう、とか、ドラえもんでもネタになって、1910年ハレー彗星の盛り上がりや1947年~1959年ごろの「空気のなくなる日」ブーム、1986年ハレー彗星ブームという流れが、彗星=ハレー彗星というくらいの天文ブームを巻き起こした、という記録としては、星空案内人なら一度は気にして読んでおくべき作品といえるだろう。
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