見出し画像

演劇集団円『ペリクリーズ』を観てきた

先日、演劇集団円さんの公演を初めて観劇しました。
これまでにないシェイクスピア作品との出会いに感銘を受け、ぜひこの作品を観てほしいという気持ちで感想を残します。

偉大なるシェイクスピア、そして歴史の長い老舗劇団の演劇集団円に敬意を込めて書かせていただきます。
私は観劇専門の人間なので、演劇に関する知識
不足や解釈の違いには何卒ご容赦ください。
私が素直に感じたことを思ったままに綴っていきます。

※以下、ネタバレ注意です。

マリンランプのような照明が吊るされた仄暗い舞台上に、深い青の衣装を纏った俳優さんが登場。ゆらゆらと同じリズムで踊る姿は夜の船を想起させました。

今回はところどころに振り付けが入り、踊りとともに語られるというのが印象的でした。
アンティオケの王と娘の怪しい関係が語られる場面は、宗教画のような構図の美しさがあり妖艶で目が釘付けになりました。
椅子を使って様々な表現をしているのもとても好きでした。

観客はガワーの語りに誘われ、物語の中の時空を行き来します。
時系列や場所が複雑な話なので、語り部の存在は初見でも理解しやすくなるので有難かったです。

さて、シェイクスピア作品といえば独特の詩趣に富んだ台詞回し。
今回驚いたのがここでした。
(実際の戯曲を読めていないので深く語ることは避けますが、)シェイクスピアの言葉のロマンチシズムを残しながら軽妙な台詞になっていると感じました。
古典戯曲でありながら、とても見やすいと感じたのは安西先生訳であることも大きかったと思います。
私個人的には、シェイクスピアの台詞はあまり情緒的に喋りすぎると共感性羞恥的なものが働くので少し苦手なのですが、今回は絶妙なバランスで甘美な台詞を発する俳優の皆さんの演技が好きでした。
俳優さんの巧みな演技も加わり、ナチュラルに台詞が耳に入り、物語の世界に没入することができました。

何役も兼ねている方が多かったのですが、それぞれ個性があってどのキャラクターも生き生きとして、どのシーンも見応えがありました。

特に石原さん演じるペリクリーズの人間味のある誠実なお芝居と、古賀さん演じるマリーナのピュアでみずみずしい輝きが印象的でした。

やはり一番記憶に残っているのは、
生き別れたペリクリーズ(父)とマリーナ(娘)が再会する場面。
観客の私たちはペリクリーズとマリーナのそれぞれの物語を第三者として見てきているので、待ちに待った対面の瞬間。
パズルのピースをはめていくように、少しずつ二人の距離が縮まっていくのをじっと見守り、この高揚感がたまらなく楽しい時間でした。
家族の再会に心が温まり、幸福感たっぷりのハッピーエンドで心地良い余韻が残りました。

公演後のアフタートークでは、
ガワーを演じられた藤田さんが研究生時代に初演でペリグリーズを演じられていたというお話を聞き、劇団の長い歴史を感じました。
今回の初代ペリクリーズから現ペリグリーズへバトンタッチしたお話は胸熱でした。
俳優の皆さん、演出家さんの安西先生への深い敬慕を感じる良いお話を聴けて嬉しかったです。

演劇集団円は格式高い劇団という印象が強く、
しかもシェイクスピアということで、
難しかったりお堅い雰囲気だったりするのかなと思っていたのですが、
爽快で心躍る観劇体験ができました。
シェイクスピアってこんなに楽しい作品だったんだ!と改めて思えた作品でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?