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初夏の味と白髪


甲府から高速バスと総武線で3時間

久しぶりに青果店を営む祖父母の家に泊まった

なかなか会うことが出来なくて
でも、ちょこちょこ電話していたけれどやっぱり

100回電話するより直接顔を見に1回会ったほうがいいなぁとつくづく思った

帰るたびに
身体はどうだ、手術して良かったなぁ、お前のお父さんが守ってくれたんだよなぁ、から始まり
「あれを食べなさい」
「それは美味しいぞ」
「これは身体にいいからほれ食べなさい」と

千と千尋の神隠しのカオナシ並みのおもてなし

あんなにバクバク食べられる口とお腹を持ってないし
おちょぼ口のわたしは腹八分目をキープしながら食べた

祖父が仕入れた美味しい野菜で祖母の愛情たっぷりの料理
ホカホカのご飯は何杯でも食べられちゃう

食後にデザートのびわを食べた

「これは初夏の味だよ」と言われた

もうそんな季節かぁと思いながらびわの皮をむいた

スッキリした甘さで一気に3個も食べてしまって
お腹壊すか心配された
あまりに初夏の味が美味しくて懐かしかった


ここでの時間はあっという間にすぎる

お風呂に入ってホカホカの身体は
フカフカの布団が敷いてある部屋に一直線

いつも布団屋さんに注文してくれるから
フカフカであたたかいのだ

あぁ、帰ってきたなぁ〜
幸せはこういうことなのだ〜
人間っていいなぁ〜と
ぶつぶつ言いながら眠った

いつも起きるとき、布団には誰もいない
わたしひとりだけ優雅に起きるのだ

すでに朝ご飯を済ませた祖母は
わたしがご飯を食べるところを
美味しいかと聞きながら
にこにこして見てくる

そんなわたしは
ご飯を食べると食べられる喜びが溢れてくる

祖母は耳が遠くなり
大きな声で話さないと話がちぐはぐしてしまう

しかし、なんでか
祖母は祖父の声はボソッと言っても聞こえる

これが長年の夫婦ということか…

「お父さんがね!この間お父さんが…」の言葉は
ここに来て何度聞いたことか

祖母が祖父のことが大好きなことがよくよくわかった

退院後祖父母の家で食べたうなぎの味を忘れていないように
びわの味も香りも決して忘れることはないだろう

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