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縁側住人4人目「意思の人」 ~ momoいろさん 後編 ~

このインタビュー記事は、
学校の先生と文筆家二足のわらじに挑戦中の
“アスノコトノハ”が、
Voicyパーソナリティー 小川奈緒さんの元に集う
魅力的な皆さん(縁側の皆さん)の一ファン
として、書いています。
 
縁側の皆さんの魅力が少しでも伝わり、
お互いのファンになれたら、
誰かの新たな一歩を応援できたら
そんな願いを込めてお届けします。
 
記事を読んでの感想、リクエストなど
ぜひどしどしお寄せください。
私も取材して欲しい。
あの人のことが知りたいという
リクエストにお答えしながら、
縁側の活動がもっと魅力的になればと
願っています。
 
     アスノコトノハ
 
 

パートナーとの出会い

夫さんとの出会いも吹奏楽。
演奏会で一緒になったことで知り合い、
その後同じ団体に所属し仲間になった。

「自分に足りない所を持っているから。」
と交際を申し込まれた。
恋愛感情は全くなかったが、
誰に聞いても彼を悪く言う人はおらず、
そんな人に想ってもらえたんだと思って
付き合い始めた。

その後一年で結婚。
だんだん自分が楽になっていることに気づく。

夫さんとの結婚をきっかけに、
そのままの自分を出せるようになっていた。
ダメな部分も見てもらえて、
私の感情を一番理解してくれる。
夫さんに救い出してもらえた。
彼女の心に巣くう闇から。

母との葛藤

momoいろさんの心に巣くう闇。
それは母親との関係だ。

Noteで綴っている母親に対する苦しい思い。
たくさんの記憶から
エピソードを拾い上げてもらう。

捻挫した足を引きずって歩いたら
「治るまでここにいなさい」
と言われて、小部屋に閉じ込められたこと。

一緒に買い物に行かなかったことを
グチグチと人前で嫌みを言われ続けること。

母の言っていることがとても許せず、
出ていってやると感情が爆発し、
プチ家出したこと。

「あなたはこうすべき」という細かなことを
ずっと言われ続けてきた。
今思うと、母の機嫌を損ねないように、
母の思う常識的なものを選択することに
神経を使って生きてきた。
やりたい事があっても
『どうせダメだと言われる』と判断して、
それ自体を忘れるように過ごした。
そしていつからか、
母には余計な話をしないと決意した。

今だに電話で、時々フラッシュバックが起こる。
電話の着信画面に母の名前を見つけると、
動悸、ため息、クラクラ。
「また何か言われる、出たくない!」
子どもに戻った自分の心が叫ぶ。
心が整っていないと電話に出ることができない。
電話を見送って、心を整えてから
折り返しすることもあれば、
気付かなかったフリをすることもある。
無理なものは無理だ。
過去の経験をなかったことにはできない。

今でも機嫌が悪くなると、
あからさまに冷たい対応をされることもある。
それでも今は物理的な距離が取れて、
心の整理がある程度できた。
私は今「誰か助けて!」という気持ちは全くない。
それでも母の機嫌を損ねないような
会話を保ち、心を安定させる努力を続けている。
夫さんに話を聞いてもらえたことで
母との関係をnoteで発信出来るまでになった。

マルトリートメントとは

みなさんは「マルトリートメント」という言葉を
聞いたことがあるだろうか?

福井大学子どものこころの発達研究センターの
友田 明美教授は
『マルトリートメントとは「避けるべき子育て」を
指し、児童虐待をより広く捉えた、
虐待とは言い切れない大人から子どもへの
発達を阻害する行為全般を含めた
不適切な養育を意味するとしている。

つまり、虐待とほぼ同義だが、
「子どものこころと身体の健全な成長・
発達を阻む養育をすべて含んだ呼称」であり、
大人の側に加害の意図があるか否かにかかわらず、
言動そのものが不適切であれば、
それは『マルトリートメント』と言える。
極端な虐待では無くても、日常生活の場面において
起こりうるもので、無自覚に見過ごし、日常的に
不適切な接し方で子どもを傷つけてしまっている
可能性もある。』としている。

アダルトチルドレン(AC)

ACとは、精神疾患や障害として
定義されているものではないが、
子ども時代になんらか「問題がある家庭環境」で
育ったためにトラウマを抱え、
そのことがその後の人生に影響を及ぼし、
生きづらさを感じてしまっている人のことを言う。

コントロールの強い親
(過保護や過干渉に育てている親、
または親の理想や敷いたレールで育児する親)は、
子どもに対して愛情深いように見えても、
子どもを無意識レベルで自分の所有物と
捉えてしまっている。
そのため、子ども本人の意思より親の自分自身の
意思や感情を優先した子育てをしてしまう。
したがって、ACは自分に対する何らかの欠落感を
抱えたり、心に深い傷を受けたまま成長し、
周囲が期待したとおりに振る舞おうとするなどの
特徴がある。

友田プロジェクト 「マルトリ予防WEBサイト」
開設│安全な暮らしをつくる新しい公/私空間の構築|
RISTEX (jst.go.jp)

子育てをしている人のほとんどは、
必死に頑張っている。
私だって、彼女だって、彼女の母親だって。
自分の子育てが虐待に近しいかもしれないなんて
思いもせず、ただただ必死に。
「しつけや教育のためには、ときに厳しさも必要。
 この子が大人になったときに
 苦労しないで済むためだ」
それとも、
「自分がやっていることはもしかして
 虐待じゃないのか。」
と思いつつ、
どうにも出来ない無力感にさいなまれながら。

私の長女は中学校で不登校を経験した。
私はいつも子育てをしながら、振り返るのだ。
私の子育てが悪かったから、
子どもが不登校になったのか。

正しいと思ってきたことも、
すべて間違っていたのではないか?
偉そうに先生の仕事をしながら、
「よく言うよ」と自分に言う。
誰だって、悩みながら子育てをしている。
自分だってこれでいいのかと思っている。
それでも、日々は続くのだ。

子育てに答えは無い。
受験戦争に勝ち抜いても、
その後心を病む人もいれば、
「学校」で居場所がなくても、
大人になって楽しく生きる人もいる。
その人の死後、評価されることだってある。
だからこそ、大切なのは今だ。
「今まで」でも、「これから」でもない。


私はプロではないので、ここからは個人の感想だ。
想像の域を超えないことを承知で書く。

でもきっと彼女は、
マルトリートメントを受け、ACとして、
息苦しさを胸に抱えて生きてきた。

しかし彼女は音楽と出会えたこと、
素晴らしいパートナーに出会えたことで、
自ら自分に降りかかったトラウマを
追い払うことが出来た。
海の底に沈んでしまわずに
自分に立ち戻ることが出来た。

これは本当にすごいことだ。
同じような連鎖に苦しみ、
カウンセリングを受けるなど人の力を借りながら
なんとか日々を過ごしている人はたくさんいる。


Momoいろさんは言う。
「昔の自分は未来が想像できなかった。
今のような自分になっているとは思っていなかった。
『未来の自分は家族と幸せに過ごしているよ。
 大丈夫。』
当時の私に言ってあげたい。」

人は何度でもやり直せる。
それが何歳であっても。
自分の信じたモノや人に向き合うことで、
自分の人生にも向き合える。
彼女を見ているとそのことを強く感じる。

最後に

ぽっかり一日空きました。何をしますか?
と質問してみた。

「ひとりで過ごします。
その時にやりたいことを
心の赴くままにしたいです。
海を見に行く、本を読む、
食べたいものを食べる。」

ずっと誰かを気にする日々を過ごしたのだろう。
先日は、ホテルのデイユースを予約して
一人のんびり過ごしたそうだ。

きっと自分を解放し、
ためらいなく自分自身を幸せにすることで
周りの人も幸せに出来ると気づいた。

色々小さい頃のことから思い返してみると、
私は家の中では苦しいなと思っていたけれど、
家の外に出れば沢山の楽しいことが出来ていた。
そのことに気づけたインタビューだったと
語ってくれた。

インタビュー後、彼女は50歳の誕生日を迎えた。
小さい頃、将来の夢はなかった。
「学校の授業で将来の夢を発表する」が、
嫌で嫌でたまらなかった。
今となれば「幸せな家庭を持ちたい」
が夢だったのかなとも思う。
卒業文集にも先生になりたいと大嘘を書いた。

今の自分の気持ちに嘘はない。
『これからは直観に従って
やりたいことをやっていきたい。
その過程で、「これだ」と思う仕事を見つけたい。
いくつになっても楽しい人生を送る。
家族の進む道を応援し、頑張りを見守る。
そして、私の大好きな人達が幸せであって欲しい。
そう思う。』

これが偽りのない彼女の今の夢だ。
これからはきっと自分のことも人のことも
幸せにしてあげられる人生になると信じられる。

そんな意思を感じる人だった。

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