透明水彩の空を飛ぶ 【39】

悪いことをしたという自覚はあった。
しかしいざそれを口に出そうとすると、上手く表現出来なくて詰まってしまった。
裕海は俯き、頭の中で必死に言葉を探す。

「……俺の言ったことで、暁人を追い詰めさせてしまったから」

「それって本当に、暁人くんは裕海の言葉で追い詰められたんだと思う?」

「……それって、どういう……?」

「だって、裕海が会いに行った時、暁人くんは寝ていたんだろ?
お母さんだって、特に裕海がどうこうだとも言っていないんだろ?
だったら、暁人くんが裕海の言葉で追い詰められたと考えるのは、それはあまりにも短絡的じゃないのか。
本人がどう思っているかだって分かんないだろ」

「……そうかもしれない、けど」

奏の言うことが正しいと片隅では理解出来ても、それを素直に受け入れて認めることは難しかった。
やはり否定しようとする裕海を見て、奏ははぁ、と溜息をついた。

「……裕海。俺が悲しいって言ったのはそこなんだよ」

「えっ?」

「お前が暁人くんのことを信じられていないんだよ。
弟みたいだって、あんだけ好きだって言ってたのに、どうして暁人くんの気持ちを信じてやれないんだよ」

裕海は絶句した。そのハッと息を呑んだ様子を見ながら、奏は発言を続ける。

「俺は裕海の話を介してしか暁人くんのことは分からないけど、そんな俺でもこれくらいは推測出来る。
きっとあの子は、そんなこと一切思っていない。
寧ろお前の言葉に勇気づけられているはずだよ、今でも。
確かに裕海は暁人くんから逃げた。でもそれは、酷いことを言ったことから逃げたんじゃなくて、暁人くんを信じることから逃げたんだ。分かるか?」

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透明水彩の空を飛ぶ【完】

「俺、ヒーローになりたい」 未来を見失った学生と人を救いたい少年の、思いが繋ぐ物語。 (全70notes/執筆期間:2016年夏~2018年初め)
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