透明水彩の空を飛ぶ 【55】

「なぁ、暁人」

話しているうちに涙が滲み始めた目で、裕海は暁人をまっすぐに見つめた。

「身体的に強かろうが弱かろうが、誰かを助けることは絶対に出来る。
というか、そんなのは、本当は関係ないんだ。
どんなに自分にとっては些細なことでも、それが誰かの助けになっていることだってたくさんある」

上手く呼吸が出来なかった。
それは込み上げてくる思いのせいか、涙のせいか。
浅く息を吸って、裕海は言葉を続ける。

「大事なのは心の強さだ。
それは体を鍛えて強くなるものじゃない。病気だって関係ない。
相手を思いやれることが、人を強くさせるんだ。

強くなりたいってあの時言ってたけど、暁人は弱くなんてない。今でも十分強い。
だって、俺が入院していた時、暁人は紛れもなく俺のヒーローだった。
あの時から、暁人は俺のヒーローなんだよ。
もう、誰かのこと救えてるんだよ暁人は。
他人を救えるほどには、もうとっくに強いんだよ」

だから俺は、今度は俺が、そんな暁人のことを支えたかったんだ。

心の中で、そう付け足した。
耐え切れなかった雫が、裕海の瞳から零れ落ちる。
折角顔を上げたのに、涙が流れてしまった瞬間に再び俯いてしまった。

しかしその後すぐに裕海がまた顔を上げたのは、前方から自分のものではない涙声が聞こえてきたからだ。
パッと見ると、裕海のことを見つめたまま、暁人が泣いていた。
「本当に?」と、呟くように繰り返して。

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透明水彩の空を飛ぶ【完】

「俺、ヒーローになりたい」 未来を見失った学生と人を救いたい少年の、思いが繋ぐ物語。 (全70notes/執筆期間:2016年夏~2018年初め)
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