透明水彩の空を飛ぶ 【37】

『暁人、運動療法をし始めたのよ』

『運動療法?』

『そう。心臓疾患があるからって、絶対に運動しちゃいけないわけじゃないのよ。
寧ろ適切な運動は、症状の改善に役立つみたいで。暁人、「強くなりたい」ってこの前から言ってて。
……でもね、少し頑張りすぎちゃったのよね。
バカよねぇ、もう。一度決めたらまっしぐらなんだから、この子は……』

その言葉で、裕海はハッとした。
「今よりもっと強くなろうぜ」と言ったのは自分で、それを暁人は言われたとおりに実行したのだ。
そう理解した途端、目の前が一気に暗くなった。

俺がそう言ったせいで、暁人をこんな風に倒れさせてしまったのか?

それじゃあ本末転倒じゃないか。何やってんだ、何この子を追い詰めさせてんだ――。

『――ッ、ごめんなさい、失礼しますっ』

『え、裕海くんっ?』

裕海は衝動任せに、病室の外に向かって走り出した。
突然の行動に加奈絵が驚いた声を出すも、足を止めることはなかった。
普段はエレベーターで下りるのだが、階段の方へ走って駆け下り、病院の外へ出た。
一刻も早く、ここから離れたかった。

雨は天気予報通り、夜が近づくにつれて強まっていた。
だが裕海はそんな雨にも構わず、傘をさすのもなあなあに走り続けていた。

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透明水彩の空を飛ぶ【完】

「俺、ヒーローになりたい」 未来を見失った学生と人を救いたい少年の、思いが繋ぐ物語。 (全70notes/執筆期間:2016年夏~2018年初め)
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