透明水彩の空を飛ぶ 【62】

「へぇ……それにしても随分思い切った決断したな。
支援学校の先生は楽じゃないって、軽く聞いたことあるけど」

「うん、かなり大変らしい。
一般学校にはない苦労もかなりあるって」

ネットで調べた範囲で分かったことをいくつか思い出し、思わず苦笑する。
正直、暁人とのことですらショックを受けていた自分が、特別支援学校の大変さに打ちのめされない自信は全くなかった。
「でも」と裕海は続ける。

「暁人も自分の病気と闘いながら強くなろうとしてる。
だから、俺がそこで負けるわけにはいかねぇな、ってさ。
そもそも大学入り直すのも決して楽じゃないけど、やれるだけやってみようと思う」

そう言う裕海の目には、奏が大学では見たことのなかった、確固とした強い光が宿っていた。
それは、ダンスを全力でやっていた頃の、ダンスで生きていた時の目と全く同じだった。
自信はまだなくとも、やりたいという思いは本物なのだと奏は思った。

なんだよ、あの時みたいなそんな目されたら、もう全力で背中押してやるしかないじゃないか。

「裕海の覚悟は分かった。
ほんとよかったよ、裕海のやりたいことが見つかって」

「うん。……なぁ、奏」

「ん?」

自分から呼びかけたにも拘わらず、裕海は俯いて一度黙ってしまう。
奏が小さく首を傾げていると、「改めてこんなこと言うのもなんだか寂しいんだけど」と再び顔を上げた。

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透明水彩の空を飛ぶ【完】

「俺、ヒーローになりたい」 未来を見失った学生と人を救いたい少年の、思いが繋ぐ物語。 (全70notes/執筆期間:2016年夏~2018年初め)
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