透明水彩の空を飛ぶ 【41】

「え、何で奏が、タクヤと――」

「敢えて今まで言わなかったけど、俺とあいつは幼馴染みなんだよ」

「……嘘だろ?」

「本当。だから俺、裕海の存在ずっと前から一方的に知ってるんだよ。
卓哉のステージ何度も見に行ってたから、Syncのメンバーも自然と覚えてた。
まさかそのSyncの一人と、同じ大学の同じ学部で、クラスまで一緒になるとは思わなかったけど。とんでもない偶然だよ」

衝撃の事実が発覚し、元々整理がついていなかった裕海の脳内は、さらに混乱を引き起こしていた。
パニック寸前のような状態だったが、そこで一つ気になったことが浮上してきた。

「じゃあ、前から気にはなってたっていう、あの時の言葉は……」

「本当にそのままの意味。
卓哉とずっと一緒にダンスをやってきたうちの一人のユウミって人が、どんな人なのか純粋に気になった。
前期の間は話しかけるタイミング失ってたから、遅くはなったけど」

そうだったのか、と呟くと同時に、謎が解けたことで引っかかりが一つ消えた。
当時は授業も大して被っていたわけではなかった上に、裕海は極力他人と接するのを今よりも避けていた。
それなのに「気にはなってた」と言われたことが、ずっとどうも不思議に思えて仕方がなかったのだった。

引き続き、奏が話す。

「……で、裕海と仲良くなったことを一応伝えた時に、卓哉から裕海のこと一通り聞いたんだ。
大会本番の少し前から、過度な練習で足痛めてて、それでも欠場するわけにもいかないから、頑張って踊り切ろうとしたんだってな?
だけどその前に酷使した足に限界が来てしまって、途中で演技を断念せざるを得なくなってしまった。
裕海は、そのことを今もずっと悔やんで引き摺っている。そうだろ?」

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透明水彩の空を飛ぶ【完】

「俺、ヒーローになりたい」 未来を見失った学生と人を救いたい少年の、思いが繋ぐ物語。 (全70notes/執筆期間:2016年夏~2018年初め)
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