透明水彩の空を飛ぶ 【66】

「バカみたいじゃねぇかよ。
奏はずっと俺とは違っているんだって思ってた自分がバカみたいだよ。
本当は奏だって俺と同じだったのに」

本当はもっと色々と言ってやりたかった。
命令の一つくらいしてやりたかった。
だけど、そんな自分の感情を表すための言葉が足りなかった。
奏はそれに対して、今さっきまで存在していた寂しさを打ち消して、フッと笑う。

「裕海、休みの間に少し変わったのな。
前までそんなこと言わなかったのに」

「今は俺のこと関係な——」

「俺も弱いから、上手く向き合えないから、こうやってはぐらかしてしまうんだよ。
だけどこうして、やっと裕海に本当のことを言えただけ、今はそれで許してくれないか」

「……奏、」

「裕海もそうやって強くなろうとしているのなら、俺も目を伏せてばっかりじゃいられないよな」

一度目を閉じた後の奏の微笑は、すっかりいつものものに戻っていた。

「後に裕海と会えなくなってから、その次に会う時。
その時に『会いたかった』って、ちゃんと言えるようになるからさ。
裕海が頑張るのと同じように、俺も俺で努力してみようと思う。
お互い何かを成長させて再会しようぜ」

「……うん、分かった。
ただ、一応二年の間は在学しているつもりだから、あともう少しは今まで通り宜しくな」

「じゃあさよなら言うのは、ちょっと延期ってことだな」

そうだな、と笑う裕海の顔も、いつの間にか普段通りに戻っていた。
この先秋が来て、冬が来る。
きちんとした別れを告げるのは、その時だ。

それまでは普通にいつもみたいに笑って一緒にいようと、裕海は決めたのだった。

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透明水彩の空を飛ぶ【完】

「俺、ヒーローになりたい」 未来を見失った学生と人を救いたい少年の、思いが繋ぐ物語。 (全70notes/執筆期間:2016年夏~2018年初め)
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