透明水彩の空を飛ぶ 【36】

『暁人ー』

聞こえる程度の小声で名前を呼ぶも、返事はなかった。
やっぱりプレイルームにいるのだろうかと思いつつも、いつもの癖で奥を覗くと、カーテンが閉まっていた。

珍しいな、この時間なのに寝ているのか?

そっとカーテンを開くと、そこには加奈絵がと横になっている暁人がいた。

『あっ、加奈絵さん』

『あら、裕海くん……今日も来てくれたのね、ありがとう』

あまりにも静かだったが故に、てっきり暁人が一人で寝ているのだと思っていた裕海は、予想外の加奈絵の姿を見て驚いてしまった。
しかしそれも束の間、彼女に普段のような元気がないことに気づいた。裕海が何かを言おうとするより先に、加奈絵の方が口を開く。

『折角来てくれたんだけど、ごめんね。
この子、さっき無茶して倒れちゃったのよ』

『えっ……!?』

『でももう大丈夫よ、落ち着いたから。
後で暁人に、裕海くんが来てくれてたこと伝えたら、絶対に残念がるわね』

加奈絵が撫でている手の先には、暁人の穏やかな寝顔があった。
普段は起きてコロコロと変わっていく表情しか見ていなかったこともあり、初めて見る表情に、少し陰で動揺していた。

そんな裕海の様子を知る由もない加奈絵は「最近ね」と言葉を続けた。

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透明水彩の空を飛ぶ【完】

「俺、ヒーローになりたい」 未来を見失った学生と人を救いたい少年の、思いが繋ぐ物語。 (全70notes/執筆期間:2016年夏~2018年初め)
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