透明水彩の空を飛ぶ 【40】

言葉が全く出てこなかった。自覚すらもしていなかった。
確かに裕海には、高三のあの時を境に、他人に信頼を置くことが難しくはなっていた。
しかし、それが暁人にも起こっていたとは全く思っていなかったのだ。
そんな自分自身に対しても軽くショックを受け、暁人に対してもひたすら申し訳なさが募った。

立て続けに言っても仕方ないと思い、奏も一旦口を閉じた。
だが、何も言えなくなってしまった裕海の言葉を待つ方が酷だと思い直し、少ししてから再び言葉を紡いだ。

「……俺さ、ずっと裕海に対して思っていたことがあって」

「……何?」

「裕海さ、自分のこと過剰に責めすぎなんだよ。
暁人くんのことも、ダンスの大会の時のこともそう。
誰もそんなことで、お前のことを責めたりしない。
寧ろそこで責める奴がいるのなら、それはその人がかなり自己中心的なだけだ。
これは俺がお前の友達だってことを抜きにしても、はっきりそう言える」

「それは……だって」

「俺、聞いたんだよ。Syncのメンバーにいた卓哉にさ」

突然、奏とは決して繋がることのない名前が出てきて、思わずバッと顔を上げてしまった。
名前だけ聞けば、たまたま同じ名前の別な人物だったかもしれない。
しかし今、奏は“Syncのメンバー”とはっきりと言った。
決して、人違いなわけではなさそうだった。

Syncというのは裕海が所属していたダンスチームの名前で、卓哉はそのメンバーの一人だった。

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透明水彩の空を飛ぶ【完】

「俺、ヒーローになりたい」 未来を見失った学生と人を救いたい少年の、思いが繋ぐ物語。 (全70notes/執筆期間:2016年夏~2018年初め)
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