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苦い思い出は、“甘さ”で上書きする——二畳半カフェ【2杯目】

趣味らしい趣味を、と夫から諭され始めた「二畳半カフェ」。

前回のnoteでは、なぜ趣味として「二畳半カフェ」を始めようと思ったのか、そもそも「二畳半カフェ」とは何なのか、などについて綴った。

“要は「お家で自分の飲みたいカフェドリンクを気ままに作りますよ」というだけの話だ。オシャレなカフェに憧れる一人のミーハー女子が、趣味の一貫として(カフェにありそうな)ドリンクを自宅で作る様子を記録的に綴りたい。ときにコラムや、その時々で感じたことを織り交ぜながら”

先に断っておくと、わたしはカフェドリンクに明るいわけではない。料理全般に対する知識もそこまでなく、美的感覚も備わっていない。慣れない手つき、素人ごころ。それでも、初回から意気込んで、夏みかんを使ったソーダドリンクを作った。

不器用ながらも完成したドリンク。味はそこそこだったのだが、作る過程が楽しかったので、次の土曜日に第二回目の「二畳半カフェ」を開くことにした。

今回は、何を材料に使ったのか?

答えはこちら。

見た目はあまり可愛くないけど、どこか愛らしいキウイだ。

スーパーの青果コーナーでは“レギュラー”とも言えるキウイ。おなじみの顔ではあるけれど、よくよく考えてみると、彼のことはあまり知らない。

せっかくだからと調理前に調べてみると、意外なことがいくつか分かった。

キウイの原産地は中国(揚子江沿岸)であること、食べごろは秋〜冬にかけてであること(見た目的に夏かと思っていた)、最近では中身が赤い「レッドキウイ」や、りんごの形をした「アップルキウイ」といったユニークな品種も存在すること。

ちなみに、私たちが普段よく目にするキウイは、「ヘイワード」という品種らしい。

小さいころから、ごく当たり前にある果物のひとつだが、改めて目を向けてみると面白い発見がたくさんあるものだ。

小学校の低学年だっただろうか。好奇心の塊だったわたしは、出来心からキウイを顔に擦り付けたことがある。ゴシゴシというよりは、スリスリといったニュアンスが近い。

今考えるとワケが分からないが、当時はいろんなことにアンテナを張り巡らせ、後先考えずに行動することも多かった。

言うまでもなく、キウイのチクチクは(文字通り)顔に貼りつき、容赦無く肌を攻撃する。キウイを顔から離したあとも、チクチクだけが顔に残り、お風呂に入るまでずっと痛い、なんてことがあった。

あのチクチクは、一度でも肌に貼りつくとなかなか取れない。いかにも子どもらしい失敗だが、今でも少しキウイを警戒するのは、そんな出来事があったからだった。

キウイをミキサーにかけ、ペースト状にする。氷を入れた透明なグラスにキウイペーストとシロップポーションをひとつ。指についたシロップを舐めると、甘さがダイレクトに舌のうえを伝った。

苦いものは、“甘さ”で上書きを。

炭酸水を注ぎ込むと、緑の果肉が舞い踊る。シュワっとした無数の気泡が、キウイのほろ苦い思い出を浄化するようだった。

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