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アタシ社2017年の軌跡

今年もあっという間の1年だった。25歳を過ぎてから、1年が経つスピードが加速度的にあがっているけど、30代に入ってからそれが爆速化している気がする。のぞみ、からリニアになっている。
今年もいろいろあった1年だった。アタシ社をつくって3期目。走馬灯のように思い出が蘇るし、意識的に記憶を辿らないと、どんどん消え去っていく。
備忘録の意味も込めて、ざっと振り返りをしたい。

クリープハイプから始まった2017年。
髪とアタシ第五巻では、たくさんのミュージシャンの方々にお世話になった。
その中でもクリープハイプは特別で、尾崎世界観さんとの出会いはとても大きかった。

取材撮影をさせていただく中から、彼らの新しいCDヴィジュアルを制作するなんて思ってもみなかった。2月にリリースされた作品集「もうすぐ着くから待っててね」

2016年のクリスマスイヴ、終日スタジオに籠って撮影し、メンバーのみなさんの熱意に包まれながら初めて制作を担当した。

3月にはアタシ社初の単行本「道を継ぐ」を刊行。ライターの佐藤友美さんと1年以上取材を続け、のべ150人以上に取材した大作になった。主人公は伝説の美容師、鈴木三枝子さん。表紙イラストは松尾たいこさん、帯はさとなおさんに書いていただいた。

4月は新雑誌「たたみかた」を刊行。編集長は三根かよこ。構想5年、創刊号の特集は「福島」を選んだ。たくさんの紆余曲折から、三根かよこが見つけた「生涯を通してやりたい仕事」となった新メディア。ジャーナリストの佐々木俊尚さんを始め、国連の方など多くの方に届いた新しい社会文芸誌。

そうこうしているうちに、クリープハイプから、アルバムのヴィジュアル制作のおかわりがきた。最初、夢かと思った。尾崎さんが写真を褒めてくれたのは本当に嬉しいことだった。新曲の「イト」は映画「帝一の國」の主題歌になり大きな反響を呼んだ。写真が好きでよかった。撮り続けてきてよかった。

出版編集業以外にも、なにかと慌ただしい年だった。BS朝日の特番、鎌倉案内人役として人生初の11時間収録を経験した。芸人さん、アイドルさんはすごい。カメラが回ると人格が変わる。声のはりとか、所作とか、「人に見られる仕事」というのは、想像以上に大変だ。

8月はアタシ社初の写真本を刊行。写真家 竹沢うるまさんとは飲み仲間、フットサル仲間だったのが、こうやって仕事に結びついたのは嬉しかった。B4変形、観音綴じとこだわりぬいた一冊になった。ぼくが普段撮っているような写真とはまったく違う、圧倒的な被写体の存在感。「絶景」ではなく「旅情」を謳ううるまさんの考え方に感銘を受けた。自分の目から見えるすべてのものに、生きている実感とつながりを感じることができた。もっと五感を使わなきゃ、とも思った。
東京、大阪、福岡、熊本でのトークイベントもよい経験だった。

夏が終わり、引っ越しのことをぼんやりと考えていた。8年住んだ逗子を離れ、どこか新しい地に行きたい。駅近に住むことも、割高な家賃を払うことも、なんだかなあ、と感じていた。もっと自分がやりたいことに投資できる環境に行きたい。そんなとき、消滅可能性都市の「三浦市」に出会った。
三浦への思いは、また別のところで話そうと思う。
衝撃的な物件の出会いと、その場所の向かいが三浦市に3軒しかない新刊書店の1つだと知ったとき電撃が走った。ほんとです。なによりも三浦の人たちとの出会い、町の空気や匂いが好きになってしまった。こういう感覚は昔からとても信じていて、大事にしている要素だった。
そこからは早かった。引っ越しを決意し、新しい住まいも1ヶ月で見つけて引っ越してしまった。

三崎に引っ越し、アタシ社の蔵書室「本と屯」もオープン。今は週末をメインに開けているが、年明け以降、いろいろテコ入れし人が集まる、屯できる空間を作っていきたい。
三崎に以前住んでいた小説家いしいしんじさんとの出会いも大きかった。来年は楽しいことがたくさん待っている。

11月、逗子から三崎に引っ越すプロセスの中で、逗子初のブックフェア「10代の自分へ。」も温めてきた。既存のブックフェアとは少し違う、編集者や写真家、作家たち15人が店番をし、10代の頃に贈る10タイトルの名著をセレクトし販売する企画。仕入れ、販売はCCCさんが入ってくれて、250名のお客さんが来てくれた。15人のトークイベントも盛況で、250人の来場に対し、400冊近くの本が売れたことは新しい発見があったと思う。

12月、引っ越しも落ち着かない中、新雑誌「S.B.Y」を創刊。髪とアタシ創刊から4年、新雑誌を作りたかった。既存のメンズヘアカタログにアンチテーゼをずっと持っていて、ヘアカタはもっとラフでイメージ先行でよいと思っていた。SNSの発達と、ウェブ上でのヘアカタ市場が拡大しすぎていて、イメージの「見える化」が進みすぎた。美容師側もイメージしながら作る喜びと、客側の任せる楽しさが希薄化してきたと思うのだ。
渋谷の今を感じられるストリートファッションを、すべて美容師さんがコーディネートし、写真家 嶌村吉祥丸が1冊まるごと撮り下ろすという、無茶な企画を立てた。
インディペンデントな雑誌を作り続けること、そしてそれをしっかり売ること。マスターベーションにならずに、自分が本当にやりたいことが、誰かのために役に立っている構造をつくること。
アタシ社の役目は、そんなところにあると思う。

2017年、アタシ社は飛躍した年になったと思う。
が、来年はそれを越える飛躍を遂げたい。出版社は、夢のある仕事だということを体現したい。
今年刊行した本は5タイトル。累計15000部を販売。小さな出版社だからできることは、もっとたくさんある思う。

「私一人で世界は変わらないけど、アタシがどう見るかで世界は変わるかもしれない」

来年も、ご贔屓に。
よろしくお願いします。

ミネシンゴ

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