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「光の旋律/Kalafina」に導かれてクエンカ(スペイン)に行ったら一目惚れした。

 今日、2020年1月20日で、Kalafinaの名曲「光の旋律」は、発売から10年を迎える。TVアニメ「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」のOP曲として発表されたこの曲だが、正直それだけに留まらない普遍的な価値を持っているのではないだろうか。梶浦さんをして、10年に1度の名曲と言わしめたのも頷ける。

はじめに

 年末年始はスペインを中心に一人でうろうろしてきた。せっかくの9連休だし、ちょっと遠いところ(とは言っても飛行機だし、どこもそう変わらないのだが)に行きたいというのが一つ、そして、クエンカに行ってみたいなぁ…。とずっと思っていたからだ。

 スペインのクエンカ(Cuenca)。UNESCOの世界遺産に「歴史的城塞都市クエンカ」として登録されているこの都市は、険しい崖の上に造られていて、遠くから見ると宙に浮いているようにも見えることから「魔法にかけられた街」なんて異名もあるらしい。断崖絶壁の上にせり出してみえる「宙づりの家」などが見どころとしては有名。

 そして、この都市はその独特の景観からか、アニメやゲームの舞台となっている。2010年の1月から放映されていたTVアニメ「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」もその一つ。じゃあ、その聖地巡礼なのか…と問われるとちょっと違う。実は、このアニメの熱狂的ファンというわけではない。いいアニメだとは思うけれど。ただ、どちらかというと、このアニメのOP曲、「光の旋律」に惹かれていたといった方が多分正しい。

 この名曲は、ひとたび聞いた時から、ずっと心に残り続けていた。そして、この曲のイメージと、アニメで描かれていたクエンカの風景がピッタリとハマっていたということもあり、10年来ずっと、一度クエンカを訪れてみたいとぼんやり考えていた。

 とはいえ、世界遺産、観光資源が目白押しのスペイン。ネットで調べてみると、クエンカは日帰りでしかも2~3時間もあれば十分、なんていう人もいて、実際、スペインに行くことに決めたきっかけにもかかわらず、そこまで期待していなかったなぁ…と。

 ――そして、そんな先入観はものの見事に打ち砕かれた。正直、今回訪れたどの都市よりも印象に残った。

マドリードから鉄道でクエンカへ

 マドリードからクエンカに往復するには、バスか鉄道かということになるけど、自分は鉄オタなのでもちろん鉄道をセレクト。在来線だとかなり時間がかかってしまう…ということで、スペインが誇る高速鉄道AVEで50分。乗る前には荷物検査もあるので、あまりギリギリに行かないように注意。なかなか乗車ホームが発表されなかったので、待合室で多少待つ羽目になったが。

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 海外で乗り鉄すると、1等車と2等車の価格差が小さいこともあり、ついつい財布の紐がゆるみがちになるが、50分だし…ということで、2等車。だけど、往復ともサイレントカー(Coche en Silencio)を選んだら、すこぶる車内は快適だった。照明もリラックスできるように落としてある。買う時にまぁ一人旅だし…と思ってなんとなく選択したんだけど、過去の自分GJである。あまりに快適すぎるので寝過ごしには注意だが。

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 クエンカ到着。ものすごくいい天気。クエンカのみならず、今回の旅行中は天気に恵まれ、冬でも日中は暖かかった。

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マヨール広場へ

 さて、着いたクエンカの駅は、高速鉄道用の駅なので、市街地からは離れている。ここからはバスに乗って市街へ向かうのだが、今日は日曜日。バスが一時間に一本、毎時30分にしか出ていない。クエンカに着いたのは9時30分過ぎ…ということで、一時間弱、駅の中で待つことになってしまった。

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 運転手にプラザマヨールと伝え、前払いで運賃を払いレシートを受け取る。バスの乗客は自分一人ww
 しばらくは新市街の中を抜けていくが、旧市街は、崖の上にあるので、細い道をどんどんバスは登っていく。これは歩きだと大変そう。そうして駅から30分ほどで、街歩きの出発地、旧市街のマヨール広場に着く。バスを降りてあたりを見渡せば、そういえば見たなこの風景アニメでも…。

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 マヨール広場にはカテドラルや市庁舎などが面している。上の写真はそのカテドラル。入場料がそこそこしたというのもあり、とりあえず時間が余ったら入ることにして、まずは城跡エリアにある、展望台目指して街歩きを始めた。

すべてが美しいクエンカの街

 マヨール広場を直接通っている道は、人や車の往来もそこそこあるのだが、そこを横に一本崖沿いの道へ入ると、起伏のおかげか、たちまち静寂に包まれる。
 ただし、ひたすら展望台に向かいたい人には、オススメはしない。何故かというと、崖沿いの道を行くと、その風景にいちいち歩みを止めてしまうことになるwww

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 ――美しい…。美しすぎる。訪れる前に、いくつかクエンカを撮った写真は見ていたが、目の前に広がる風景は、それとは比べ物にならなかった。
 凛とした空気と静寂、むきだしの岩肌、天にまっすぐ伸びる糸杉、そして冬の暖かな日差しと、影。すべてが美しかった。

 25日は過ぎたけれど、スペインはまだまだクリスマスシーズンだからだろうか、街の時計台が奏でているクリスマスソングの鐘の音が、クエンカの街を包んでいた。午前中ということもあってか、日曜だけど観光客も多くない。こんな空間を独り占めしていていいのだろうか…。
 ある意味クエンカの街に一目惚れしてしまったけど、こんなことされればまーとりあえず行くかーくらいのテンションでのこのこクエンカにやってきた、弱キャラATBくんは一発で惚れてしまうわwww

 途中、途中でアニメにも出てきた風景にも遭遇。

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アニメ「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」(C)Paradores・Aniplex/第1121小隊 の一部画像を比較研究目的で引用しています。

 そのまま崖沿いを進んでいくと、展望台へ到着。…いや正確に言うと、展望台の先の岩場と言った方が正しいかもしれない。展望台自体は、車の通れる大通り沿いにあるので、その先の岩場には柵もなにもないwww 厄介オタクに是非ここで最前管理して欲しい。

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 流石に足がすくむwww 滑って落ちそうな感じではないけど、スマホとかなら落としかねん。YouTuberなら、岩に座って自撮りでもするんだろか。

 しかし、自然がつくりだした厳しさは、美しさと表裏一体なわけで、素晴らしい風景が広がる…。

 さっき書いたとおり、この展望台自体は幹線道路沿いにある。やけにバイクの音がうるせえなと思ったらサンタの集団がいた。

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 この展望台はGoogle先生によれば、「Mirador Barrio del Castillo」というらしい。城下地区の展望台、といったところか。その名の通り、城門なども残っている。帰ってきてから知ったのだが、この城壁の上も登れるらしい。

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時計台へ

 川に挟まれているクエンカの街。今度は、反対側の崖沿いを通りながら、時計台へと向かう。

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 時計台付近は最近、広場などが整備されたようで、きれいだった。この時計台は確かアニメでも出てきた。アニメ中では時告げ砦のなかにあったが、ホントはマヨール広場を超えたちょっと先にある。

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 流石に時計台の上に登るのは無理そうだったww ここからもクエンカの街を望める。

宙吊りの家とサン・パブロ橋

 さて。クエンカといえば、真っ先に挙げられそうなのが、この宙吊りの家。崖の上から完全にせり出したバルコニーで有名だけど…。

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 見ての通り、THE修復中だったwww ただ、後述する通り、この街は別に宙吊りの家があるから価値があるわけではないと思う。あまり、名所を見るんだ!という街ではない。そのノリで行くと、2、3時間で十分という話になってしまうのだろう。

 とはいえ、その前にかかる見事な橋(サン・パブロ橋)と合わせて、画にはなる。素晴らしい…。どこを切り取っても画になる街といえば、コルマールなどを始めとしたアルザスの街なんかが挙げられると思うが、ここクエンカもそうした街の一つだと思う。

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時告げ砦で補給

 さて、この橋を渡って反対側に来たということは、目的地は一つ。時告げ砦、もといパラドールクエンカ。スペイン国営のホテルで、アニメでは、主人公たちが所属する第1121小隊の駐屯地となっている。

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 今回は宿泊はしないのだが、補給…もといランチを摂らせてもらった。レストランに入ろうかとも思ったけれど、ソファーに座りながら、アニメでも描かれた印象的な廊下を眺めながらというのもオツだなぁと思い、バーでイベリコ豚のサンドイッチとフレッシュオレンジジュースをオーダー。イベリコ豚はもちろんのこと、スペインはオレンジジュースがホントに美味しい。

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小林製薬の糸ようじはマリア像ではありません

 唐突でアレだが、ここクエンカの街は「水曜どうでしょう」でも訪れていたらしい。視聴者の間では、山の上に立つ”マリア像”が有名っぽい。

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 あそこに登ったら眺めは良さそうだが、流石に徒歩では厳しそう…。ということで、この後は特にプランもなく、帰りの時間まで街をぶらぶらすることにした。

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 旧市街は階段が多いので、車などの心配なく徒歩で回りやすくはあるけれど、年を取ってからは大変そう。でも、家々の下のトンネルをくぐっていくのは面白い。

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 と、そんな風に風景も眺めながらぶらぶらしていると、なにやらいくつかの集団が、パラドールの先の道へと進んでいる様子が見えた。Google先生によれば、その先にトレッキングにも最適な素晴らしい展望台があるらしい。もう帰りのバスがマヨール広場を出るまで一時間くらいしかないが、ええい行ってみよー!ということで向かうことに。

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 落石注意な崖沿いを進んでいく…と突如登り坂…というか階段が現れた。階段が終わっても、まだまだ上り坂が続いていく。マジか…と思いつつ、もうここまで来たら行くしかない。

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 道の所々に十字架が。普通ならここで気づくのだろうが、登るのに必死で全く気が付かなった。

 20分くらいだろうか。ひたすら登り続け、目の前に現れたのは…。

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 おまえかー!!!!!!!

 なんと、期せずしてあの山を登ってしまったらしい。そして、ついでに言うと、この像は、男性的に見える。少なくともマリア像ではない。
 ということで、小林製薬の糸ようじ的なアレはマリア像ではありません。藩士の方々に申し上げておきます。

 ただ、ここからの風景は、いや「も」というべきだろうが、素晴らしかった。特に、街が夕日を浴びているこの時間では。

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 あのサン・パブロ橋が遥か下に見える。よくもまぁ登ってきたものだ。

 今見ても、美しい…と惚れ惚れするが、それはきっとあの時みた景色がそのままリンクしているからだろう。こんな写真ではクエンカの街の魅力は1ミリもきっと伝わらない。是非、訪れてみてほしい。

 時間もないので、頂上滞在時間はたったの5分。悲しい。次はもっとちゃんと時間を取ってこよう。

宵の明星に見送られてクエンカを後に

 バスでAVEの駅へと戻る。空には金星と細い月。

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 トレドやグラナダ、バルセロナと比べれば、華やかさというか、ここがすごい!というものは少ないかもしれない。日本からのパッケージツアーでもこの街が含まれていることはあまりないようだ。けれど、この街の素晴らしさは、空気とか調和とかそういう類のものだ。wikipediaの孫引用で申し訳ないが、実際、世界遺産としても「クエンカの素晴らしさは個々の建造物群よりも、むしろ包括的な都市景観にこそある」と言われているらしい。

 光の旋律に導かれてここまできたら、この街に惚れてしまった。拗らせオタクなので、第一印象がこんなに強烈なものになってしまった以上、必ず再訪することになると思う。また、その日を願って。¡Adiós! …そう遠くないといいなww

♪空の音響け、高く哀しみを超えて
♪君の目に映るものは全て本当の世界
♪涙さえ君をここに留めておけない
♪降り注ぐ光の中 明日を奏でて
(光の旋律/Kalafina)

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