Ushihira Yasuyo

作品になったときひとりでに動き出して欲しいと願いながら木彫りをしています。 http:…

Ushihira Yasuyo

作品になったときひとりでに動き出して欲しいと願いながら木彫りをしています。 http:///www.kirikabu.info

マガジン

最近の記事

檸檬~見えてきた人物像

梶井基次郎の写真を見て「きっとこんな感じで書き物をしていたのじゃないかな」と想像してスケッチを重ねてきましたが、なかなか彫る行為にまで時間がかかりました。どうしてかな?と思いながら彫る行為に向き合おうとしない私。ならば、もう少し彼を知ろうと調べたり、他の短編をいくつか読んでいくことにしました。 ある崖の上の感情という短編小説が何とも陰鬱でありながら、登場人物の崖から見下ろす景色、窓が私の頭の中に浮かんできます。それは新見南吉のおぢいさんのランプの最後のシーンとどこか重なるよ

    • 檸檬~人形アニメーション

      4月半ばから「檸檬」の人形アニメの創作に入りました。人形のコマ撮りだけにするのか、映像や絵を入れるのか未だ決まっていないのですが、作りながら考えていこうかなと思っています。今回は、朗読をベースに映像を付けるようなイメージです。朗読のAsukaさんの「檸檬」を聴いて、今まで少し苦手だった朗読の世界が一変し、想像の世界が色鮮やかに再現されるかのように広がりました。この私の頭に浮かんだ世界が正解というわけではないのですが、少しでも誰かと共有できたら楽しいかもしれません。 作者でも

      • REDCHECKERS CIRCUS

        私はメジャーバトンをふりウサギのラッパと共に街中を歩いた 赤い市松模様の服を着たサーカスの集団は予告も何も無く突然現れた。太鼓やラッパを鳴らしながら街中を練り歩き人々の注目を集めた。先頭のメジャーバトンを振っている少女の前にラッパ吹きのウサギが出てきて集まってきた人々に向けて言いました。 「さぁ さぁ 皆さん お立ち合い お立ち合い! レッドチェッカーズサーカス団のお出ましだよ!」 列になったサーカスの一団を見るとクマや猫が二本足で歩いているではありませんか。ピエロ

        • tea time

          旅人は革のトランクに 銀のスプーンと紅茶 それから白いティーポットを 元あった場所へ戻すように並べた。 パチンと音をたてて 蓋をとじると 馬に乗って ふり返りもせず 行ってしまった。 彼は銀の食器をまるで博士の手慣れた実験のように扱い紅茶を淹れてくれた。予想していた味よりもずっと普段の味がして、あれ?と思いながら飲む。心を包むような時間の流れにハッとして生きていることを実感する。

        檸檬~見えてきた人物像

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        • しいたけさん
          1本

        記事

          レクトルとパッシオ

          週末は本棚のレクトルじいさんと一緒に夕飯をとるんだ。 僕が食品庫からいただいてきたのをテーブルに並べて二人で いろんな話をするんだよ。 いつか人形が動いてほしいという願いを今年からどうにかして実現していこうと思っています。その一つのお題がレクトルとパッシオです。本棚に住むおじさんとねずみのお話。まだ内容が詰まっていないのですが、片隅で生きる二人の静かな情熱をコマ撮りアニメという方法で物語にできたらなと思っています。

          レクトルとパッシオ

          ある日森の中で

          ほんとうは  ずっとこうして おどっていたいのよ ほんとうは 楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。もうこの時は二度と帰ってこないと気付いた時には、ひらりといなくなっている。目の前にある扉とは形も色も違う扉がいくつもあってバタンバタンと開いたり閉じたり忙しい。扉から大量の紙が舞い上がりひらひらとやってきた一枚の紙を手にして目を落とす。そうかそうかと頷いたりして。 少女は踊りながらもう既に帰ることを考えていて、待っている人のことを思いながらクマと踊っているのです

          ある日森の中で

          porta

          本の扉をひらくと私は好きな世界へと 飛んでいくことができるの 今日はアフリカの仮面をつけて 皆とおどりを踊ったわ 物語と現実の境界がまだはっきりとしていない幼い頃、人形が動くことを信じていたり、絵本やアニメの世界の中に私が入り込んだりしていました。ニルスやスプーンおばさん、とんがり帽子のメモルなどの物語は私にとって夢の世界だったのです。 「お母さんすずめがちべたいちべたいて泣いてるよ」 私が3歳ぐらいの頃、母が私を自転車に乗せて雪道を走りながら聞いた私の呟きを

          Transsilvaniae

          羊を飼い 花を売る 牛車で物資を運び その日に稼いだお金で夕食を食べる国がある 私は分かっているようで分かっていなかった。頭では理解していたはずなのに感覚として。今、この時も同じ星で羊を飼って暮らしているという事。毎日彼らは羊に話かけ背中を撫でて手の先に羊の体温を感じている。私は何も分かっていなかった。

          Transsilvaniae

          Gemini

          いつも君を探しているよ 何かが足りない気がして 君だったらどうする?って 心の中でつぶやいたりしてさ 私は双子座です。もう一人の自分がどこかにいるような気がして今も探しているの。公園や信号でもう一人のわたしにバッタリ出会ったら私はその時なんて言うかしら?あなたはなんて言うかしら? あなたはわたし? そう言って鏡のように手の平を合わせて小さく微笑んだりして。

          sequor

          りんごを胸いっぱいに 抱えて あともう一つ と手をのばす 幸福の赤い実は きらきらと輝いていた 先日お手紙を書いていたとき、成果という言葉が自然に浮かんで使っていました。この言葉の語源が気になったので調べてみると面白い記事がありました。ラテン語のsequor=セイクゥワの「続く」や「次に来る」から来ているのではないかという説でした。古代ローマから少しずつ形を変えてここまでやってきた言葉たち。響きもどことなく異国の乾いた風にふわりと飛び乗るような印象です。ほんのひ

          a warm sweater

          羊のおばぁさんは小さな 孫を抱き上げた。小さな額に ニョキッと角が顔を出しているのを 確認しニコリと笑った。 おばぁちゃんって温かいですよね。セーターのように。一緒にいてくれるだけで嬉かった。それはきっとおばぁちゃんもいっしょだったのかもしれないな。お互いに大きな期待もなくありのままでいられたからかな。        静かに広がっていくセーター 冬が来る前に編んでくれるの

          a warm sweater

          CAT ON THE TABLE

          猫はねかわいいから彫らないって 決めてるのよね。今回はテーブルが 彫りたかっただけよ。本当よ。 猫を彫るのは本当に久しぶりです。猫は可愛いですから。まるでAKBの小娘たちのように可愛いですから。可愛いと言われるために私は彫っている訳ではないのです。ですから今回はテーブルが彫りたかっただけですのよ本当に。これだけは言わせて下さい。猫は可愛いのです。くぅーッ

          CAT ON THE TABLE

          母のスライサー

          先日の日曜日の事。私は作品展とワークショップがあったので大阪へ、夫は建築技能士会の見学会で朝から福井県へ行くことになっていたので中2と小6の息子たちだけで初めてお留守番をしてもらいました。 大丈夫かな?喧嘩しないかな?ご飯はちゃんと食べるかな?と心配をしていましたが、ガスコンロを使う時は連絡をくれて、夕方には買い物をして二人でハンバーグを作ってくれていました。なんと愛おしい息子たちでしょう。彼らもエッヘンという感じで自信満々のようでした。 子どもたちの留守番で私の小学校四

          母のスライサー

          湖の真ん中で

          長い耳をつけたウサギのおじさんが 時々現れては不思議な質問や 忠告をしてくるの 湖の真ん中で私はその答えを探している 湖はしんとしている。 輪郭を覆う木々たちは湿った空気を纏い空の蒼さに今にも溶けこんでしまいそう。 彼女を乗せた舟は湖の真ん中で水面にくっついて離れようとしない。時々魚が跳ね波紋がゆらゆらと舟に近づいては深い湖へと消えていった。

          湖の真ん中で

          羊と鳥と

          ふかふかであたたかい 君の背中は おひさまのにおいがしたよ 明日から阪急百貨店うめだ本店スーク暮らしのアトリエさんで個展が始まります。大きなリビングのようなお店の一角に私の作品たちを並べてもらいます。 今回のテーマは『賑やかな森』茨木のり子さんの一人は賑やかの詩の中に出てくる言葉です。制作は孤独なようでいて夢中になれる尊い時間です。心は満たされていて賑やかです。だけれど、皆さんと一緒に過ごす時間はもっともっと心が躍り賑やかです。制作の喜びとはまた違う喜びで心がふかふか

          ピエロのフック

          先日41歳の誕生日を迎え家族と一緒にキャピタル東洋亭に行ってきました。我が家はめったに外食をしないので、子どもたちは楽しみで楽しみで一日中良い子にしていました。最近は家族でおでかけをして皆が満足できるところが外食と旅行ぐらいになってきたように感じます。子どもたちも成長し個性も趣味も違うし仕方がないことですよね。さぁ次は息子の誕生日!何を食べに行こうかな。楽しみです。 誕生日で思い出したのですが、私が小学校3年生の時、近所のお友達を招待してお誕生日会をしてもらいました。母の作

          ピエロのフック