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ストーリーのあるお菓子 ⑥ N.Yチーズケーキ

(写真は2012年に行ったレッスンのイメージカードより)

雑誌でみた憧れのケーキ

 初めてN.Yチーズケーキの存在を知ったのは、学生時代発行されていた料理雑誌「TANTO」(廃刊)の渡辺みなみさんの連載から。アメリカに在住していることから数多くのアメリカンベイキングを紹介されていて、その後一冊のムックにまとめられて。色とりどりの果物やデコレーションを施された美味しそうなケーキがあったのに、なぜか目に留まったのがN.Yチーズケーキ。デコレーションどころか真っ黄色の焼き菓子 笑。もともとチーズケーキが好きだったとはいえ、このあたりから焼き菓子ラバーの道が始まっている気がしつつ…。

 混ぜて焼くだけのシンプルなレシピだったのに、作ってみるのに躊躇したのが、1ポンドのクリームチーズを使うのと、オーブンにお湯をはって湯煎焼きすること。まだまだ乳製品が気軽に入手できる時代ではなかったので、結構な勇気がいったのですよね、クリームチーズを買うのに。そしてオーブンにお湯をはるってなんだか怖いし~と先入観もあってしばらくは眺めるだけ。その後なにをきっかけにかは忘れたのですが思い切って作って焼いてみたら、どっしりと濃厚なチーズとたっぷり入れたバニラビーンズの甘い香りに一気にとりこになってしまって!

 だったものの、やはり私日本人なので、一切れ食べるとちょっとつらいな~、酸味ももう少し減らしたいな~、しかも1台作るのに1ポンドクリームチーズ使うのもな~ということで、生地量を半量にして小さい型で焼いたり、重くなりがちな油脂を減らして、土台にグラハムクラッカーを敷いてみたり。酸味は減らしても重く感じないようにと、レモン汁の代わりにレモンの皮のすりおろしを加えたり。少しずつ改良を加えて、徐々に自分好みのコになりつつあったのだけど、

 何か違う。

 なーんとなくすっきりしないまま、しばらく作らない時間が流れて。


パークハイアットが完成させたレシピ

 学生時代、藤野先生のお菓子教室で月に1回上京した際、気になるお菓子屋さんを片っ端から行ってお菓子を食べていたのですが、当時横田さんというスターシェフがいたパークハイアット東京のブティックもそのひとつ。時代の最先端を行くスタイリッシュな空間で売られていたケーキはどれも宝石のように見えたのを覚えているのですが、選んだのは当時のスペシャリテの一つだったN.Yチーズケーキ。まるで苺のショートケーキのように周りをホイップクリームを塗って苺を飾ってあるフォルムも斬新で。そしていただいて、濃厚だけど後味がすっきり。

 あ、これ、私が作りたかったチーズケーキだ。

 すぐさま、レシピを調べ(横田さんはプロ向けの雑誌で主要なレシピを公開されていたのです)てみると、私が行っていない工程がひとつだけあって、全卵の一部をメレンゲにして加えていること。あ、これだ!すぐさまそれまでの自分のレシピに取り入れてみたところ、ずっと追い求めていたN.Yチーズケーキが完成したのでした。

「もったいない」からうまれた進化形

 そこで完成ほぼ完成していたのですが、後日談があって。あるときいつものように作ろうとしたら、雑に混ぜたせいで、生地にクリームチーズの粒粒が残ってしまって。なんせ単価の高いクリームチーズやサワークリーム、バニラビーンズに国産レモンを惜しげもなく使っていますから、このまま焼くのも捨てるのももったいない。あ、そっか、濾してチーズの粒を取り除けばいいんだ~と生地を濾したところ、あら、生地がとても滑らかで綺麗、焼いたら、あら、いつもより美味しくなっている!…「ひと手間」をかける大切さも知って。


 アトリエ・ドゥ・シュークルがお菓子教室を始めて11年経ちますが、その中で一番多く教えたコ。その間アレンジレシピもいくつか作ったのですが、昨年で一旦レッスンでお教えするのを最後にしました。というのは、家庭で入手しやすいクリームチーズでは私の理想の味が再現しずらくなってきたから。だけどここに書くことで、また私が納得のいく素材で作って食べてもらうことで、伝えていけたらなと思っています。

※昨年7月に行ったレッスンレシピに詳細な材料や工程を記した完全版を後日こちらで有料にてUPします。アレンジバージョンやより美味しくいただくソースの作り方、残りがちなクリームチーズを使うおまけランチのレシピもつきますのでお楽しみに!




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Yukako YAMADA

12年間運営してきた料理・製菓教室を手放し骨休め中。しばらくは緩く家庭料理・家庭菓子作りのあれこれを配信します。http://parquet.exblog.jp

ストーリーのあるお菓子

「アトリエ・ドゥ・シュークル」のお菓子、誕生秘話、製作過程、そしてお菓子に込めた思いを写真と共にあれこれつづります。
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