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フリーペーパー掲載エッセイ

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「おかん時間」に連載中の『子育てのまにまに』をはじめ、過去のフリーペーパーに掲載したエッセイを集めてあります。
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記事一覧

黄色い救急車

東京に生息する腐れ縁の赤毛の彼女は 私が凹むと黄色いカーをぶっとばして来てくれる。 まるでさっきまで海で遊んでいたような格好でさ。 「クラゲでも見に行く?」とか言っちゃってさ。 「人は人だろ」なんて男前でさ。 白馬の王子に用はないけれど、黄色い救急車には救われっぱなし。 「オカンである前に、おまえだろ?」 君の運んできたこの言葉を、オカン時間に載せようと思うよ。 だって、だってさ。 この言葉は、君と私の知らないところで、 あと何人か救ってしまうような気がしてならないんだ。

サンジュの友。

「今年、サンジュなの。」 「!?」 “永遠の二十歳”的なジョークかと思ったら、30ではなく傘寿だった。 娘と私の、歳の離れたお友達。 「いつもはね、友人とここへ来て瓶ビールをふたりで1本空けるのよ。  彼女、75でお嫁に行ったの。素敵でしょう。」 寿司屋でちらし寿司をつつきながらはにかむ笑顔がとてもチャーミング。 彼女はアートをやる。アートと暮らしている。 いや、その生き様がもはやアートだ。 「心が通うときは一瞬ね。お友達になれて嬉しいわ。」 美術館の企画展で浮かな

紙deラヂオ〜最終回〜

*紙deラヂオはこども英語サークルLittle Beans会報紙B面オマケ記事です。 3月12日、時刻は12時を回りました。 紙deラヂオのお時間です。こんにちは、はなむらここです。 OPM)春の歌/SPITZ 春ですねぃ。お子さんが入園をひかえたママたちは、ミシンかたかた、お名前かきかき、時々ヘックション!賑やかな季節ですね。 センチメンタルは春風に預けて、楽しい思い出づくりに励めたらよいですね! M2)桜坂/福山雅治 私は先日、娘とプレ(未就園児遊びの会)の最終回

紙deラヂオ=第5回=

*紙deラヂオはこども英語サークルLittle Beansの会報紙B面オマケ記事です。 2月12日時刻は12時。紙deラヂオの時間です。 ごきげんいかがですか?はなむらここです。 今日のフラワーアレンジ、いかがでしたか? あのお花紙がこんなにオシャレに変身するなんて! 是非、熱いハートを添えてパパへのバレンタインプレゼントにしてみて下さいね。 K先生、ご指導ありがとうございました^^ まだまだ寒い2月、陽のあたる場所で背中をあたためつつ元気に乗り切っていきましょう! O

紙deラヂオ=第4回=

*紙deラヂオは、こども英語サークルリトルビーンズ会報紙のB面オマケ記事です。 OPM)いいんですか?/RADWIMPS 時刻は12時を回りました。1月16日水曜日、紙deラヂオの時間です。 こんにちは、はなむらここです。 こんなに寒くていいんですかっ?冬だもの、仕方ないです(涙)。 今日は、どんなに寒くても心はあったかくすごしたい!ということで、メッセージテーマは「最近幸せを感じたこと」です。 M2)やさしさに包まれたなら/松任谷由実 ラジオネーム タイセイさんから

紙deラヂオ=第3回=

*「紙deラヂオ」はこども英語サークルリトルビーンズ会報紙B面のオマケ記事です。 ■メッセージテーマ:私の気分転換 OPM) Radio/JUDY AND MARY みなさんこんにちは、はなむらここです。 12月12日時刻は12時!おお!12ならび笑! 今日のランチは何ですか?リトルビーンズ、楽しんでもらえたでしょうか。キラキラのスパンコールに触れたり、それをペタペタ貼り付けたり・・・みんなとワイワイ、いつもと違うことをしてみる、それだけでなんとなく気分転換になったりしま

紙deラヂオ〈第2回〉

■Opening 愛について/スガシカオ https://youtu.be/Yk3M5Dd8xKY 11月21日、時刻は正午を回りました。 みなさんこんにちは、紙deラヂオ、パーソナリティのはなむらここです。 いやー、ここへ来てぐっと寒くなりましたね。 衣替えを面倒がって先延ばしにしてきましたが、モー無理!と押入れをひっくり返し、一気にセーターな今日この頃です。 ラヂオの前のあなたはいかがお過ごしでしょうか。 Openingにお届けした一曲は、スガシカオ、愛について。だって

紙deラヂオ

※この文章は、こども英語サークル リトルビーンズの会報紙B面に掲載したものです。 OP BGM CI) 道/宇多田ヒカル 時刻は12時を回りました。 こんにちは、紙deラヂオ、パーソナリティのはなむらここです。このラヂオを読んでいる貴女は、リトルビーンズを終えてホッと一息ランチタイム、という感じでしょうか。今日も歌って踊って楽しめましたか?ここからの1300文字、よろしければぜひこの番組をお楽しみください。 2580バイト『紙deラヂオ』 この番組はこども英語サークル リ

まるちゃん、ありがとう。

さくらももこさんの訃報。 ショックだった。 どういう訳か、子育て支援センターの本棚に彼女のエッセイがたくさん揃っていて、姫を遊ばせつつ端から読み返していたところで、ファンレターを書きたいなあなんて思っていたからなおのこと。 私は1982年生まれ。 “りぼんっこ”だった。 吉住渉さんの『ハンサムな彼女』にはまってりぼんを買い始め、矢沢あいさんの『天使なんかじゃない』に心酔し、柊あおいさん『銀色のハーモニー』、水沢めぐみさん『姫ちゃんのりぼん』、小花美穂さん『こどものおもちゃ』

うなじの記憶

顎の下で切り揃えた髪が気づけば肩をくすぐるようになり。 書いたり描いたりしているとなんだか鬱陶しい。 えほんを3冊創ったら美容室に行く、という自分へのささやかなご褒美にはあとまだ1冊描かねばならない。 (今度は木村佳乃みたいなショートにしたい気分。) そんな訳で、恒例のひっつめ髪。 色鉛筆のシッポで頭を掻く。 後れ毛を毛束に埋める。 網戸から入る風が首筋をゆく。 ーそうか、あれは恋を失ったからじゃなかったんだ。 蘇る20年以上前の記憶。 遠足の砂浜。 ショートにしたア

妄想書店

本屋に入ると、だいたい無意識に食べ物の本の前に立っている。 『簡単&美味しいお手軽スープレシピ』 『無水鍋でつくる絶品スープ』 そんでもって今日の私はスープが気になるらしい。 新しい本特有のインクの香りをかぎながらページをパラパラめくると、頭の中ではトマトの水煮缶を開けたり玉ねぎをみじん切りにして涙ぐんでみたりとなかなか忙しいことになっていく。トマトベースの野菜スープにはブロックベーコンを入れよう。仕上げに粉チーズをかけてあむり。アチ。  「あ。美味しいパンも食べたい。

オツキーとの和解

私は月のことをオツキーと呼んでいる。 彼女との間の、ちょっとしたワダカマリを乗り越えた末の愛称である。 私は学生時代にそれに似たあだ名で呼ばれていて、月モチーフの指輪を中指にし続けていた。闇夜に一筋の救い的な光を投げかけてくれることや、嫌いなプールの授業を見学する印籠になってくれたこともあり、オツキーは頼もしい親友のように思えないこともなかった。 ただ一点、彼女とのシンクロにはいささか煩わしさを感じていた。 これがその、ワダカマリというやつだ。 オツキーが満ちる、欠ける

あの鉄塔が見えたら

「いい?窓の向こうに山が見えるでしょ? あそこにね、小さな鉄塔があるの。 今はわからないと思う。見えたら教えて。」 その時、私は泣いていた。 ぐちゃぐちゃに泣いていた。 17歳。書道準備室。墨の匂い。 “不幸の館”。 彼女は自分の部屋をそう呼んでいた。 体操服の行列が外を走る掛け声。 ノー天気な青空。川の上を渡る風。 青春臭いものにうんざりして泣けてくる。 野暮な自分にも泣けてくる。 でもここには好きなものが在る。 墨の匂い。 先生らしくない先生。 醤油煎餅。 「

サーモンの行方

適当にちぎったレタスに新玉ねぎのスライス。 5枚切りの山切りトーストを焼くこと5分。 「あれ、サーモンがいない」 「いない、じゃなくて、ない、だろ。」 「ここにいたはず。あれ、わたし解凍した?」 チーン 「おなかすいた」 「あ、ゆで卵食べる?昨日余計にゆでたのが冷蔵庫に、、、あれ、無い。」 チーン 「ねえ、トースト、コメダにしたい」 「ああ、あんこね。あんこ。あれ、アンコ??」 チーン 私の記憶が正しければ8年に一度くらいこういう日がある。(さて、どれがトースト