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いにしえのうた 第2回 リコーダー邂逅 『風』を感じるリコーダー

みなさんこんにちは。群馬県高崎市のコンサートサロン「アトリエミストラル」の櫻井紀子です。
6月11日(日)、いにしえのうたシリーズ第2回の「リコーダー邂逅」コンサートが開催され大好評のうちに無事終了しました。

今回、古楽のシリーズとして第1回リュートに続き、リコーダーを特集しました。「リコーダー邂逅」というタイトルは、日本人なら誰でも知っているリコーダーという楽器の、実はあまり知られていない魅力と「出会って」ほしいという思いから付けました。

中村栄宏さん

演奏の中村さんはオランダのアムステルダム音楽院・大学院を卒業され、昨年日本に帰ってきたばかり。アトリエミストラルでは3回目の登場となりましすが、今回は『無伴奏』でお願いしました。

プログラム
J.v.エイク 笛の楽園より プレリュード、天の父よ
林光 ソナチネ(1947)
J.S.バッハ 無伴奏フルートのためのパルティータ
廣瀬量平 アルトリコーダーのためのメディテーション(1975)
J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲 BWV1007
吉嶺史晴 テナーリコーダーソロのための「ララバイ」

いわゆる「古楽」に分類されるものと「現代曲」がバランスよくミックスされたプログラム。1時間20分くらいという想定でしたが、終わってみれば2時間弱…(笑)

リコーダーという楽器は古楽器として有名ですが、実は20世紀に入ってリコーダーのための曲が多く作曲されたので、古楽&現代曲という組み合わせは割と普通のことみたいですね。

楽器の説明もしてくださいました

プログラムに関しては中村さんに全てお任せでしたが、実にバランスよく、お客様を飽きさせず、トークも分かりやすく、テクニックや音楽性もすばらしく、リコーダーの良さを存分に発揮し、中村さんのファンも確実に増えた(笑)コンサートでした。

クラシックのコンサートにおいて「現代曲」をプログラムに入れるというのは、主催者としては一種のチャレンジなのです。お客様はほぼ聴いたことがないですし、やはりお馴染みの曲の方がいいのではないか?と不安がよぎることもあるのですが、この日のお客様は、現代曲をしっかりと集中力をもって聴いてくださいました。

プログラムの構成はいつも悩むところですが、この日のこの情景を目にした私は『もっとお客様を信じていいのかも!』と思いました。新しいものを耳にした、目にした感動というのは忘れがたいと思います。

バッハの無伴奏チェロ組曲は、音域などの関係から、原曲をそのままリコーダーでは演奏できないため、中村さん自身がアレンジを加えたバージョンが演奏されました。リコーダーらしい軽快な装飾音を使ったテクニカルな箇所があるかと思えば、どことなく「風」を感じる箇所もあり、元の曲のエッセンスがありつつも別の独立した曲になっている気もして、バッハの時代、演奏者は自分なりのアレンジで演奏し、聴く方もそれを楽しんでいたのかな?と当時を想像することができました。

現代曲は中村さん曰く「意図したわけではないが3曲とも日本人作曲家の作品」でした。日本人作曲家だからか、リコーダーという楽器だからかはわからないのですが、草原や水辺に「風」を感じながらたたずんでいる、という情景や「尺八」に似たフレーム感のなさなども感じました。これは新しくかつ嬉しい発見でした。

今回、アトリエミストラルという空間と「古楽器」の相性の良さを再認識しました。よく響くので、その響きを活かして、音の終わりを考え、次のフレーズとの関係性を組みなおす、ということを中村さんもおっしゃっていて、この響きの特徴はモダンはもちろん、古楽にはぴったりだなと。

もっと言うなら、この響きを演奏者自身もお客様も十分に感じるために、ゆったりと空間全体を響かせることができるテクニックも必要なのだろうな、と思ったりしました。それはつまり「空間」の力を信じる、ということなのかも。

お客様からは、演奏に対してはもちろんなのですが、その中でなぜか私に対してお褒めの言葉もいただきました。「このような企画をしてくれて、中村さんという素晴らしい演奏家にオファーしてくれて、本当にありがとう。」
コンサートの企画はお金の問題や、集客や、チラシの作成やらいわゆる「芸術」とはかけ離れた「ビジネス」としてのとらえ方をしなくてないけない一面があり、それがとても大変なのですが、このような感想を寄せてくださる方や、中村さんのような素敵な演奏家の演奏を聴くことができると、心からやってよかった!と思えます。

中村さん、お忙しい中「無伴奏」というこちらのオファーに応えてくださり、素晴らしいコンサートを行うことが出来ました。ありがとうございました。
また、終始、集中力をもって聴いてくださり、終演後も熱心に質問してくださったお客様のおかげで、よいコンサートが出来上がったと思っています。ありがとうございました。

さて次はいにしえのうた第3回「ヴィオラ・ダ・ガンバ」上村かおりさんです。

いにしえのうた第3回 Musical Humors

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