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眠らぬ鉄の魔女

「ここ、テストに出るぞ」

教師が黒板を小突いた。

僕は窓の外を眺める。青い空、白い雲。台風が過ぎた後の晴天が清々しい。

「こら!授業に集中しろ!」

国語教師のユキちゃんが僕を指す。教室で笑いが起こった。仕方ない。妄想でもして過ごそう。例えば、テロリストが襲ってきて……

僕は再び空を見た。そして目を疑った。

窓の外に甲冑を着た機械がいる。緑色に光る筋を走らせた仮面、刺々しい武者鎧……大柄なサイボーグみたいなやつが腕を組んで空中に立っていた。よく見ると半径2メートルほどの円盤に乗って浮いている。

みんなはまだ気づいていない。

僕は悲鳴を上げた。

そいつが両腕を解いたのが見えた。

ユキちゃんが叫んだ。

瞬間、眩しい光が放たれ、灼熱が教室内を舐め尽くす。

光。

炎。

赤。

熱い。

苦しい。

息ができない。

からだがうごかない。

からだ。

バラバラ。

こげて。

みんながしんだ。

ぼくはしんだ。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





「ぼくは、しんだ」

私は少年の最期の思考を復唱した。記憶はここで終わり……悔しさと怒りが背筋を伝う。だが、私は涙を流さない。代わりに強めに手を叩く。すると、音に反応して焼け焦げた教室内の床に描いた魔本陣が消滅した。

「ほウ、ソれハ記憶を読ミ取る魔術か」

合成された音声が夜空の闇から聴こえた。いる。記憶の中の奴と同じだ。仮面、鎧、大柄なサイボーグ。腰には焦げた女性の生首。ユキちゃんだ。そうだ。奴らは脳以外の全てをサイボーグ化した魔女狩りの戦士……!

「ハじめマしテ、魔女アウロラよ。我ハ教会の聖騎士ジブラルタル。お命頂戴スる」

聖騎士ジブラルタルは両腕の封印を解き、激しい炎を纏った聖剣を抜く!

「覚えておけ、クソ野郎。その首、ユキちゃんは……魔女スノウホワイトは私の姉だ」

私は応えるように聖騎士どもから奪った右腕と両脚に高速で術式を流し込む。力が満ちるのを感じる。涙は流せないが、復讐はできる!

「シね!」

迫る聖騎士!私は唯一の生身である左腕のタトゥーを掲げた!

【続く】

#逆噴射小説大賞2020

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