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デッド・デッド・リローデッド

「お前の番だぜ。ほらよ」

俺は古臭いリボルバーを対面で座ってる男に投げる。まるで奢った酒をテーブルに滑らせるバーテンダーのような気軽さ。ポーカーじゃあるまいし、ブラフは意味がないことは知ってるが、まあ、気分だ。

男は無言でリボルバーに手を伸ばす。手が震えていない。怖気付いた様子は無い。どうせハッタリだ。俺が勝つに決まってるんだからな。

説明不要、これはロシアンルーレットだ。

自分のこめかみに向けて交互に銃の引き金を引いて、死んだ方が負け。シンプルだ。なんでこんなことをやってるかっていうと、マフィアの代打ちだ。これが俺の仕事。報酬はそこそこデカい。で、なんで俺が余裕こいてるかっていうと、俺は主人公だからだ。ハハ、何を言ってるかって?言葉そのまま、俺はこの物語の主人公なんだよ。自分が創作物の世界の住人だって知ってて、つまり、作者が俺を殺すことは絶対にないって理解してる。メタフィクション……っていうのかな。どんな無茶苦茶なことをしても死なない。主人公だから。ジョークじゃないぜ。さっきも何のためらいもなく自分の頭にリボルバーを押し当てて引き金を引いた。当然、セーフだ。

だが……何かがおかしい。

こいつだ。目の前にいるこいつ。男が銃を手にした途端、俺は猛烈な違和感を覚えた。いや、これは……バカな。胸騒ぎがする。この俺が嫌な予感がするだと……!

顔面から汗が噴き出す。俺の狼狽を感じ取ったのか、男は凶暴に笑った。そして口を開く。

「そうだ。まだ名乗ってなかったな。俺の名前はラッキー・ジョナサン。名前の通り、運には少しばかり自信があってね」

「なんだと」

「さあ、運の試し撃ちだ。力の真価を見せてみろ!」

男は自分に言い聞かせるように叫ぶ。こめかみにリボルバーを押し当てる。その表情は凄まじく、歯を食いしばり、瞳は……なんだ、あれは?まるで蛇の目みたいに鋭い。こいつは本当に人間なのか?

男は銃の引き金を引いた!

【続く】

#逆噴射小説大賞2019

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