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星を探して

台風が近づいていたからか、洗濯物が風に揺れている音で目が覚めた。

時計を見ると4:19を指している。早朝と言うべきか、夜中と言うべきか悩ましい時間に目覚めてしまった。

洗濯物が風で飛ばされていないか確認する。良かった。無事みたいだ。

僕は驚いた。不意に空を見上げると、そこには星がたくさん輝いていたから。

「東京ってこんなに星が見えるのか」と感心した。もっとじっくり見てみたい。同居人を起こさないように注意しつつ、僕は外に出てみる。

昼間は活気があるこの街も、この時間となっては誰もいない。まるで、僕だけの街になったかのようだ。

空を見上げると、南に3つ、星が並んでいるから見つけやすいオリオン座がある。その近くに、ひときわ輝く星々を結んであげると、冬の大三角ができあがる。

最近、プラネタリウムに行ったばかりだから、多少は分かるんだ。

でも、どうもおかしい。星が思ったほど綺麗に見えない。原因はすぐに分かった。

街灯だ。

しかも最近の街灯はLEDライトが使われていて、想像以上に暗闇を照らす。

それでも僕は、暗いところから東京の星空を見上げたかった。

歩いても歩いても、そんな場所は見つからない。
とうとう、僕は諦めた。気づいたんだ。
東京にそんな場所はないってことに。いや、どこかにあるのかもしれない。でも、今、僕の近くにはないんだ。

がっかりした気持ちで家路につく。また、窓を開けて星を見てみた。さっき見たときの輝きなど微塵も感じなかった。

僕は、プラネタリウムの解説員の言葉を思い出した。

「星は一切の光がないからこそ、輝いて見えるんです。もしどんな小さな明かりがあったり、その光が目に入ったりしたら……それだけで、星本来の輝きを見ることはできないのです。」

あっ、そうか。夜中に目覚めて、何の光りも目に入っていない状態で星を見たから、輝いているように見えただけなんだ。星を綺麗に眺められるところを探している間、街灯の明るい光が僕の目に入って、気がつかないうちに目が光に慣れてしまったんだって。

僕は後悔した。
東京は星が見えないところだと、人はよく言う。そしてそれを耳にする。

でも、違うと分かった。
実は、見える数が違えど、東京でも同じように星空を楽しめるってことに。その輝きを目に見られるってことに。

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