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サンフランシスコの靴職人

「君の足は随分と苦労がかかっていたみたいだね。でも、もう大丈夫。この靴はこれから君の身体の一部になるよ。」

サンフランシスコの靴職人の言葉だ。僕は、卒業旅行でサンフランシスコに一人で向かった。それは、靴職人のフランクリンさんに会って、僕だけの革靴を造ってもらうためだ。

レンタカーを借りて、向かう。距離は100マイル(約160km)。フリーウェイを順調に進み、牛が草を食む姿を真横に縫うように丘を抜け、山も近くなる。大きなクルミの木が、お家への目印だと書いてある地図を頼りにたどり着くことができた。

フランクリンさんが出迎えてくれる。僕の暮らしについてや、いろいろな質問に答えながら、足の石膏を採る。ずっと合わない靴を履き続けていたからか、僕の足は指を真っ直ぐ伸ばせなかったり、骨が出っ張ったりしていた。そこで、フランクリンさんは一番上に書いてある言葉を僕に掛けてくれたんだ。

1か月後、靴が届いた。足を入れてみる。全てが自分にあった靴がここまで快適なのかと正直、その場に立ち尽くしてしまった。こればかりは、体験した人でしかわからないと思う。履き続けて1年、フランクリンさんの言っていた通り、靴は僕の大切な身体の一部になった。いくら歩き続けても疲れない。歩くことが楽しくてたまらない。

いつか必ず、職人らしい、目の奥に力強さが宿り、温かい手をしたフランクリンにまた会いに行きたい。そして、あの時のお礼と新しい相棒をお願いしに行くんだ。

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