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共創しよう、人間だもの。

別解で、世界に駆動力を。

お話を聞いたのです。クリエイティブディレクターの吉澤到さんに。
博報堂でコピーライターからキャリアをスタートした吉澤さんは海外留学を経て、新規事業開発を司る「ミライの事業室」の室長を務めておられます。“クリエイティビティで、この社会に別解を。”というステートメントを掲げる博報堂。加速するデジタル&ネットワーク化によって接点が多重的に生じる現代社会を“生活者インターフェイス市場”と定義し、ロジックで導かれる正解よりもクリエイティブジャンプで生まれる別解を社会実装すべく、単なる広告という概念を超えてさまざまな領域での価値創造に邁進しているのは周知のことですが、吉澤さんはまず言うわけです。コピーとは、経営そのものである、と。言葉によって、経営者の想いを伝え、意味を付与して、進むべき方向を示し、感情に訴えて人を行動させ、現場の創意工夫を引き出し、経営にコンシステンシーを与える。企業の経営を駆動させ、世の中を前進させるための言葉としてコピーは機能する、とのたまいます。Think different. 例えばアップルはもはや世界の駆動力となっています。


哲学は、半導体から生まれない。

さらに経営者の頭の中を知りたくなったという吉澤さんは、世界のエグゼクティブが集うロンドン・ビジネス・スクールに赴きます。面白いのが、もはや学校には心理学者の方が多いと。通常MBAではテイラーイズムに始まる科学的な経営管理をまず叩き込まれるわけですが、その限界は現代の社会問題でもあるとさえ思います。だからこそ、武蔵美がロジックの限界を突破する学び舎としても旧来の美術教育からの進化に取り組んだりするわけですが、経営の世界はマクロ経済やファイナンス、計数管理やROI・KPI等の算数に加えて、組織行動論やモチベーション、意思決定バイアスやナッジ等の心理学、さらにどう生きるかという価値観や真善美という哲学が大事になっていると彼は言います。パーパス、存在意義です。お金になればいい、では全然ダメで、法人という“人”として、どういう人間でありたいか?考え抜いて、その信念のもと真摯に生きていくこと。その人格に善があれば、社会に必要とされるし、悪があれば、居場所はなくなっていく。企業は、人なり。AIやロボットは算数は大得意ですが、心理学は微妙、哲学に至っては永遠に答えを弾き出せないことでしょう。だからこそ、松下幸之助は永遠なのです。


仏教思想とシステムリーダー。

そんな吉澤さんが考えるこれからのリーダーシップは、システムリーダー。成長に限界をも見据えなければならないプラネタリーバウンダリーの時代。私たちは一定の枠の中で繁栄を目指さなければなりません。市場の独占を目指す自由競争はどこかでバウンダリーを超える。だからこそ、自分も相互に繋がり影響しあうエコシステムの一部と捉え、複雑に絡み合うWicked Problemに対して、人々をエンパワーメントしながら場や状況を作ったり、本質的な問いを投げかけることによって北極星を描き、集合的リーダーシップを発揮することが求められている、と。その視点には、仏陀の説く相互依存まで内包されています。わあ、すごくおもしろい。仏教の真理である縁起、因縁生起です。僕は自我が確立された頃からフィロソフィーとして根底に仏教思想を置いてるのですが(宗教としてではなく)、足るを知り、他の神を認め、相対性で世界を捉え、存在でなく関係を真と見る。ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。ブディズムを基幹に持つシステムリーダー、自分の目指す北極星が見えたように思い、吉澤さんに感謝なのです。

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダーシップコース クリエイティブリーダーシップ特論/第13回/吉澤到さんの講義を聞いて 2021/10/4

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