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似合うリップと似合わないリップ そして運命を動かすリップ


時として、鏡の前に自分の思い通りの自分がそこにいないことがある。
そんなことは、女性なら誰でも多かれ少なかれ経験しているのではないだろうか。

そのときの体調や気分、できごとや習慣によって、そして生理による女性ホルモンのバイオリズムの変化によって、顔つきや肌の状態も変わってくるし、年齢によるサインも人それぞれのタイミングで出てくる。
生理を軸とした話だと、肌や体調が最も調子が良い「キラキラ期」と呼ばれている時期は1ヶ月のうちにたった1週間しかなく、そのほかはホルモンバランスの変化で何かしら不調のサインが出るとされている。
「あれ?」となることがもはや日常なのだ。

何が新しい商品を試したときには、ものすごくがっかりするような、脳内で描いた理想と現実とのギャップ、という大げさな話ではなくて、もうちょっと肩すかし感のある、テニスで良いサーブ打ったと思ったら的外れにコースアウトだったり、割と自信のあったボウリングのスコアが日によってぜんぜん調子でなかったみたいなことも起こる。
もしくは料理をして、「あれ、いつも美味しくできるはずのメニューなのに、こんな味になっちゃった。食べられないことはないけど、なんか惜しいな」というような、ニアミスでほんの一瞬だけだけどテンションが下がる、こっちの選択ミスだ、となり、みたいななんとなく居心地のわるいこともあったりする。
いろいろメイクしてみたけど、なんなら今日はむしろノーメイクの方が良かった、と思う日だってある。


私たちは物心ついたときから、たくさんの刺激的な夢であり理想であり熱狂するほどに胸が高鳴る「最高の色かたち」の情報をたくさん浴びせられ、よく言えば多くの魅力的な選択肢に恵まれ、
自分が選んだたくさんのものに囲まれて、そこから得た体験の惚気を言ったり時には文句をつぶやきながら生きている。
かぐや姫のように、複数人の男性(今の時代のプロダクトの量と広告数を男性に置き換えたら体感軽く35億以上レベル)が必死に集めてきた宝物を恍惚に満足げに眺め、はたまた何かが不満そうに横目で見ては、止められない時の流れに寄り添うように、無限に溢れ続ける宝物に目移りし続けている。


ある日、社内で某国産ブランドの新作のリップを試せる機会があった。常日頃から気になるブランドのコスメの動きはオンラインでもオフラインでも常に自然とチェックしていて、各メディアを見ていて気になるパラメータが徐々に上昇してきていて、脳内クリップの前列の方に置いていた新製品だった。


まず、私は前提としてパーソナルカラーがたぶんブルーベースだ。
たぶん、なのは、お金を払ってプロに診断してもらうサービスを使ったわけではなく、最近流行りのweb診断で何回か試したのと(結果にムラあり)、友人や職場の美容感度の高い女性からぱっと見の印象で言ってもらった結果なので、正確なところは正直わからない。

服の場合は、選んだアイテムのディティールやテクスチャー、全体の色合わせやシルエット、他アイテムとの組み合わせによって似合う色似合わない色があるので、厳密に「これは無理だーコースアウトー」となるケースはなかなかない。

ただ、似合う似合わないがかなりわかりやすいのは、間違いなくリップの色だ。

広告などを見て興味が惹かれたものは、直感的に似合わなそうだと思ってもいちどは試してみることをしてきたが、今のところ、どう考えても私はオレンジコーラル系やイエロー系、そして赤味ブラウンのリップが壊滅的に似合わない。
あと、素の唇より明るいベージュリップも。
コンシーラーで素の唇の色を潰してからリップをのせるやり方はどうにも気に入らず、素の唇の色ありきで良い色合いや好みの色がのるものだけを、手元に集めてきた。

特に今年はオレンジイエロー系やブラウン系のリップの当たり年でトレンド化していて、インスタのポストやブランドの広告などで、毎日ほんとうによく目にする。
似合わないからと言って、その反面ですごく似合うカラーの得意領域があるので、自分とは違うパーソナルカラーの人に変な嫉妬心とかぜんぜんないのだが、かわいいなと思った色がすごく似合っている人を見るとないものねだりで「うらやましいな」とは思うこともあるし、なにかPR画像などを見ていてテンションが上がっても、「これは自分のカラーではないな」と思ってしまうときや、試してみてやっぱり似合わなかったときの悲しさは、予想はしてはいても、胸に少しだけツンとくるものがある。

そして社内でテスターをしたリップは、見事にラインナップの9割はオレンジ・ベージュ・ブラウンの配合でできているような、暖色カラーが勢ぞろいだった。
季節柄とトレンドもありつつ、きっと、「今」の日本で人気なカラーを研究して作られたことを想定すると、おそらくこれが需要の高さを汲んだ結晶たちでもあるのだな、というなぜか感慨深い気持ちになった。
海外のブランドは、人種によって多様多種な肌の色であることや価値観の多様性を見越していてか、ファンデーションでもリップでも、日本と比べて色幅のバリエーションがかなり多い。

それに加えて日本よりも挑戦的で前衛的なプロダクトを作っているイメージのブランドも多い印象で、「こんな色、どこ用?日常でそんな出番ある?笑」というカラーリングもいつも小気味よく堂々と織り交ぜてくる。

もちろん、需要を汲んでいて保守的なことが、決して悪いわけではない。
喜ぶ人が大多数なのであれば、その需要にまっすぐ誠実に応えよう、という真面目な気概が、国内ブランドには多い印象。
言わずもがなだが、需要が高いほうにわかりやすく思いっきりベクトルを振ったほうが、売り上げも立ちやすいだろう。

あくまで海外ブランドと比べると保守的なイメージだった、なので、最近では随分と、国内ブランドのアプローチの仕方がプロダクト自体もPR方法や内容も、今までとは大きく変わってきているように思う。

ずっとコンサバOL向け・女子アナの定番品と呼ばれてきたブランドがプレイフルなカラーリングに一新したし、「新しい時代を私たちで作ろう、新しい自分に出会おう、もっと自分らしく楽しもう」という多様性と個人の「らしさ」の肯定と、人それぞれの多様な需要とライフスタイルに寄り添うマインドとポテンシャルがあることについて、国内ブランドのどこでも一斉に主張し心からの賛同と共感、そして手にとる人の「これすごく好き!」の気持ちを得るため盛り上げてきている風潮だ。

思いのほか前提情報が長くなったが、話を戻すと、私は結論、某国内ブランドの新作のリップが、ほぼ全種類試してみたけどどれもしっくりこなかった。
塗ったときは、いつもと違う印象が出て、「良いかも!新鮮」となったのだが、そのあとしばらく時間が経って鏡でふと見たときに、「あれ?なんかいつもより顔色悪くない?元気なさそう…?いやもはや具合悪そう」となったのだ。


美容実情の説明ばかりで少し疲れてきたので、もっとここからは、エモーショナルを加速させて話していきたい。
カヌーに乗せた全お客さんわかりやすいようにはきはきと丁寧に説明をしていたディズニーのジャングルクルーズのガイドさんが、いきなりカフェでの同性どうしでの雑談化する変わりようになるかもしれないが、ご容赦のほどを。


ほんとうに、話し方も友達風に変えてみます。

それでね、試したリップ結局どれもそんなに似合わなかったって思ったから、帰りに自分に似合う新しいリップ欲しくなっちゃったんだよね。
とはいえ昨日はそこそこ仕事で疲れてたし時間かけずにいろいろぱーって見たい気分だったのもあって、カウンターじゃなく日比谷ミッドタウンの伊勢丹ミラーに行って。
最初に試したのは、MAC
インスタで色んな人が愛用しててずっと気になってたけど茶系で似合わないだろうなーって試してなかったチリと、あと最近でたやつで名前忘れたけどモーヴよりでくすんでて茶色っぽいやつ。
今日試した〇〇の茶系はNGだったけど、めげずに再トライ的な。笑
さすがMACで、人塗りでめっちゃムラなく色のって、おしゃれ顔になった感じはでたの、最初は。
でもなんか、口だけ気になるんだよね。なんか、べつのもの乗せてますみたいな。
(ナポリタン食べた?明太子?)
人によってはありなのかもだけど、自分としていまいち気分上がらないというか、シンプルに顔に合ってないっていうつらさ。笑

すぐにポイントメイククレンジングでオフして、次は、ジバンシイ行った!
じつはジバンシイのPH反応ダークリップが裏の大本命で。
めっちゃ欲しい!ってほどじゃないけど、今まであまり持ってなかった結構ゴス寄りのテイストだし、ほかでもあんまりでてきていない感じだから、持っておきたいしこれに似合うモードな服増やしたいとか、そういう目的の買い物路線。笑
あ、なんか、美容系専門男子がずっとシリアスな顔でジバンシイの前に立ち尽くしてたから、さっと気になる色ひとつ取ってべつのブランドの鏡に写ってさっと塗ってみたかんじ。
真っ黒じゃなくてベリー系のダークリップ先に塗ってみたんだけど、(似合わなかったMACの茶系リップの赤味を打ち消したい気持ちのあらわれかもしれない) 思ったよりぜんぜん似合わなかったw
その日、たまたま全身アースカラーというかベージュやホワイト中心だったのもあるかもだけど、
なんかコレジャナイ感つよかったよね。残念。
その次に、美容男子の身体を避けつつブラックもさっと取り出して試したんだけど。
まあ、似合わない。聖飢魔II(変換でたw)の陛下の子分みたいで笑った。
髪も無造作におろして全体的にナチュラル系だったし、まあ、スタイリングとの相性もあるよね。とはいえプロダクトの見た目はエッジ効いててどれにも似てなくて、すごいタイプだったから、残念だったよー

つぎね、トムのリップなんとなく試そうかなーってなって。前もちょこっと試したりしてたんだけど、そのときはほかブランドで買った色んなリップの感動とか印象が劇的に強かったタイミングだったのもあって、正直そこまでいいとは思わなかったんだよね。
でも、ふと手にとった色が、塗ってみたらめちゃくちゃいい色で。実物ちょっとだけフューシャピンクぽくて明るすぎるなー秋ではないなーって思ったんだけど、なんか、これぜったい似合うっていう確信あったんだよね。笑
で、案の定すごいしっくりきた。
塗ってみたらぜんぜん蛍光ピンクみはなくて、むしろ私が持ってるもので多めなちょい青味ピンクリップとも系統違くて、ギリ唇から浮かないコーラル系ピンクみたいな絶妙なかんじ。
シンプルに言うと、似合わない天敵オレンジでは
ないけどギリギリのラインまでオレンジ味を混ぜてくれてるって感じ。
シンプルじゃないかな?笑
違和感なく似合うし、今まで持ってない感じかつ、実物より大人っぽい色気がでちゃってるのかでちゃってないのか?っていう、すごい新しい感じのナチュラルな盛れ方(シンプルに上品な色気っぽいのが唇限定で出てる気がするけど恥ずかしくてそうは言えない)するって感じ


気のせいかもしれないけど、服でもメイクでも、自分に似合ったものやガツッときまったもの身にまとってるときって、店員さんが男女ともにいつもに増してすごい親切な気がする。笑
たぶんと言いつつ確信なんだけど、自分自身がお気に入りだったり似合ってるなって思うものに身につけててご機嫌だから、周りの人もにこやかに接してくれてる原理なのかなって。
昨日びっくりした話で、これはいつも行ってる最寄りのコンビニなんだけど、店員さんがお会計ののあと商品袋に詰めてくれてる途中に、今の間にそのカフェラテ入れてきていいですよって言ってくださって。(セルフだからローソンじゃないよ)
で、カフェラテ入れ終わってレジに戻ろうとしたら、服屋みたいに、レジから出て両手で袋持ってコーヒー入れるところまで来てくれたんだよね。その人もたまたまその日に何が新しいもの買ったとかプライベートでご機嫌なことがあっただけかもしれないし、理由はたいしたことないかもだけど。
たまに接客してくれる店員さんでそんなことしてもらうのはじめてだったから、ふつうにびっくりして。これが自分に似合う良いリップ効果かと一瞬よぎった感じ笑


これだと1人でずっとしゃべり倒してる人みたいですが、友達(美容に関心高い)に話すとしたら「風」こんな感じ、かもしれません

コンビニ定員さんの例をだしましたが、書いといて申し訳ないですがそれはすごく嬉しい、に繋がるわけでもなく。
リップを選んで買って、所持していてつけているとき、どのタイミングが1番自分にとって幸せなんだろう?と考えてみました。

最近思うのは、
「しあわせなことや気持ちって、なにかがすごく楽しみなときや、それと案外遅れて時間差で実感がやってくる」

久しぶりに会える女友達と行ってみたいお店のURLを出し合ってわいわい言っているときや、
あ、そういえば冷蔵庫にこの前買ったアイスあった!とか。
べつに1本のリップで仕事の励みや助けになるかというと正直そんなことはそんなないと個人的には言えるんですが、

「疲れたときは自分だけの切り替えの習慣をつけると上手くいく」

と聞いたことある話はかなり実体験すりあわせのもと納得していて、私にとっては何かで行き詰まったり面白くなくなったり疲れたときは、

・無になる(アウトプットとインプット両方しない、ひたすらにマインドフルネス)
・心が高まるものをたくさんインプットする
・誰かと相互作用のある楽しい話題や興味深い話でをアウトプットする
・新しい何かを買う
・美味しいものを食べる
・つぎの楽しみな予定のことを考える
・かわいい動物の動画を見る

こんなかんじです。
このなかで、なんだかんだ1番簡単なのは、どれだと思いますか?
勘が鋭く推察力のある人は、ものを買うには思考とお金がいるから、今あるもの(例えばリップ)を
塗る と答えるような気がしています。
が、しかし。
まあ私自身によるもので私の主観が正解クイズでしかないんですが、答えは、

・つぎの楽しみな予定を考える

です。
リップって、塗ったあとは意外と塗ってること忘れちゃうんですよね。
似合うね、とかいいねってほめられたら嬉しいけど、塗ってるよ〜どや♡みたいなのはなく。
お気に入りの服だったら、(どやはないけど) 服が自分の目から映るぶん、この服着てるの楽しいな〜って言う気持ちの持続性は高いかもしれないです。
でもリップって、正直日に数回ちらっとしか鏡で見ないわけなんですよ。

リップは買う前までの高揚感がジェットコースターをじわじわ登っていくかんじで、自分にぴったりだと思ったものを見つけたときがジェットコースターの1番高さのあるところを急降下したときにキャーって叫ぶところのピーク。
その後は、買ったときや家に帰って自分のコスメに混ぜたときの気持ちやつぎの日におろし立てを塗ってみたときの気持ちの高まりなどいろいろ種類のある気分の回転や感情の抑揚がふわっと都度あって。
あとは、お気に入りなものを持っていることやいつでも使えることの満足感で無意識に満たされてる感じ。

結局何が言いたいんだっけと立ち戻ったときに、
タイトルを見返して、「運命」というワードを出したかったのを思い出した。
「持っているだけでしあわせ」なリップは、そのまま出番なくベンチ入りしていることも非常に多い。
でも、たとえ日常使いされずベンチ入りの時間が長くとも、自分にとって特別なリップというものが確実にたくさん存在しているのだ。


それは、何かの記念や、何かの楽しみのために買ったリップだ。
なにか気持ちの切り替えに一役買ったリップで、なおかつそのときの自分に心からぴったりだと思えて、そのときの気持ちまでもがしっかり封じ込まれたリップは、なかなか出番がなくとも、だいじにしていたい。

そしてここは解像度高めに話すのが阻まれるが、
「誰かのために買ったリップ」も、意識して振り返ってみれば、いくつか存在していると思う。

記憶は常に、無意識的に時と場合により新しく塗り替えられ消えていくこともあり、
個人的には、リップを見て誰かを思い起こすことはない。(音楽ではたくさんあるんだけど、意外となくて残念、恋愛記録系エモリップ)
言葉にして認めることは少し恥ずかしいが、その日に会う人(同性でも)との会話や時間を思い描いてリップを塗ることは、無意識的に、無自覚を装ってそうしていることかもしれない。


もし仮に、

「この1本のリップを1年間必ず毎日付け続けてください」

と言われたら、私はすごく嫌な気持ちになり拒否反応が出るのが目に浮かぶ。
何か特別なイベントがない限り、毎日リップを塗る瞬間には特別な高揚感があるわけではないが、その日の気分やちょっとした思いつきで手持ちの数あるリップをひとつ選ぶことは、私にとってとてもたいせつなルーティーンのひとつなのかもしれない。
もし、1本のリップしか使わなきゃだめな縛りであれば、もはやリップはノーメイクで他で遊ぶからいいよとなるか、もしくは古代人のように野菜や花などいろんな素材から着色料を見出し口にまとう面白さに目覚めるかもしれない。
もし、そのものやその習慣を急に誰かに取り上げられたり制御されたとしたら、いかに別の方法でその習慣やその習慣から得る楽しみを自分で取り戻す熱意があるかで、ざっくり自分の何かに対する熱量センサーを測ることができるな、という風に思った。


「女の子って〇〇♪」
といった感じのコピーが、女性性をひとつの視点でひとつのテンプレ化して押し付けている、という風にSNSで炎上していたけど、こんなこと口には出したくないし、いい大人でそんなはしゃいだ感情を雰囲気的に醸したくはないけど、(そして女の「子」というのはあまりにも違和感あって阻まれるが)
うまく体裁のいい説明はつかないけど、心からじゅわっとくるハッピーな気持ちにさせてくれるのは、女性に生まれて良かったなと思う瞬間だなと思う。
私はファッションデザイナーやメイクさんなど、ゲイの方々で感性が研ぎ澄まされていておしゃれで美的センスを磨いている人たちに強い尊敬と羨望が昔からあるので、メイクをする男性もとても魅力的だなと思う。
これからの時代、よりメンズメイクも主流になってくるはずなので、楽しみだ。


さいごにヘルスケアの話をねじ込むと、
「右足を動かしたときの数秒前には、脳から身体へ右足を動かす信号がいっている」
という話が印象的かつとても好きで、
リップを買ったことがターニングポイントになりました、じゃなくて、正確にはリップを買うまでの一連の心模様と心の動きこそ、その後の人生を動かす何かの衝動を秘めているのではないかなと思う。
その衝動の先の結晶がリップで、その時そうありたい自分を自分との対話で確認し、外に体現していく自分自身をアートボードとした制作活動のようなものだ。