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基本性格特性セット

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ビッグ・ファイブ・パーソナリティやダーク・トライアドなど,多くの研究のキーとなる性格特性を説明した記事を集めました。人間の性格特性の基本次元を知ることができます。記事は随時追加さ… もっと読む
他の記事に出てくる用語を押さえるための,基礎知識セットです。人間の性格特性の基本次元を知ることがで… もっと詳しく
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#パーソナリティ

ダークな性格の年齢差と性差

社会的にあまり望ましくないパーソナリティ特性として,ダークなパーソナリティが盛んに研究されています。 ダーク面他の人を自分の利益のために利用するマキャベリアニズム,冷淡で倫理観が欠如するサイコパシー,誇大で他者にも特別扱いを求めるナルシシズムの3つをまとめてダーク・トライアド,これに,他者の苦しみを見て喜びを抱く傾向であるサディズムを加えてダーク・テトラドという枠組みで研究が進められています。 近年,ダークなパーソナリティの共通点を総合したダーク(D)因子の研究もちらほら

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勤勉性が裏目に出てもやはり勤勉性

ビッグ・ファイブ・パーソナリティは,人間全体のパーソナリティをおおまかに5つの次元で表現します。この枠組みは健康で通常範囲のパーソナリティを上手く表現する枠組みではあるのですが,さまざまな精神的な問題にも対応したものだとされています。 たとえば強迫性パーソナリティ障害(OCPD)は,柔軟性や効率性を犠牲にしても,秩序,完全性,精神的・対人的コントロールに過度にとらわれてしまうことを特徴とします。これらの特徴は,完全主義やワーカホリック,角に物事をあれこれ考えてしまうような傾

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性格の統合因子と給料の多さ

パーソナリティ(性格)について,いくつの因子(次元,特性)があるのかという問題については,長い間,検討されてきました。その研究のおおもとになっているのは,辞書から人間の性格用語をいくつ抜き出すことができるかという研究です。 そこから調査や統計処理,特に因子分析を使って,いくつの因子で人間の全体的な性格を捉えるのが適切なのかという研究が重ねられていきます。そしてそのうち,5つの次元から人間のパーソナリティを捉える,ビッグ・ファイブ・パーソナリティや,5因子モデルと呼ばれる枠組

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性格は正規分布の形状をとるのか

ほとんどのパーソナリティ特性は,多少の歪みはあれど,左右対称の釣り鐘型(ベル型)の得点分布を描く傾向があります。ピークはたいていひとつで,平均値は中央値に近く,多くの人は平均値や中央値の近くに集まり,高い得点と低い得点の極端な値をとる人はとても少ないという現象が生じることになります。 ベル型の分布は正規分布であるとは限りません。正規分布はベル型の形状をとる分布のひとつの形にすぎないのです。ロジスティック分布やt分布も釣り鐘型をとりますが,正規分布よりも両端が分厚かったり,よ

「特性」とは何か

心理学ではパーソナリティ「特性」とか認知「特性」という言葉が使われます。この「特性」とは何を意味するのでしょうか。今回は「特性」について見ていきましょう。 定義「特性」というのは「trait」の日本語訳です。特性は,思考や感情,行動のパターンを記述したり測定したりするための「基本単位」とされたり「一側面」とされたりする意味を持ちます。加えて,状況や時間を超えてある程度の一貫性と永続性を仮定する概念でもあります。単に行動の一貫したパターンというだけでなく,もう少し広い意味を持

MBTIを疑問視する記事

アメリカ合衆国のPsychology Todayに,MBTIを疑問視する記事が投稿されていました。こちらです(Personality Assessments: Separating Science From Nonsense)。 今回はこちらの記事を参考にしながら,パーソナリティ検査の現実への応用について考えてみましょう。 人事の決定日本でもアメリカでも,パーソナリティ検査が仕事への採用プロセスや人事上の決定に,参考情報として用いられています。それは時には「適性検査」とい

サディズムはダークな何に近いのか

近年,ダークなパーソナリティ特性として注目されているもののひとつに「サディズム」があります。ダーク・トライアド(マキャベリアニズム,サイコパシー,ナルシシズム)にサディズムを加えて,ダーク・テトラド(Dark Tetrad)とまとめて呼ぶことすらあって,世界中でさまざまな研究が行われています。 ◎マキャベリアニズム:他の人を操作する,自分の利益を優先する ◎サイコパシー:冷淡で共感性に欠け,倫理観や道徳心にも欠ける ◎ナルシシズム:誇大な自分自身に対する感覚を抱いていて,他

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価値観と性格との関連は?

価値観を10種類に分類する研究があるのをご存じでしょうか。シュワルツ(Schwartz)の価値観分類と呼ばれるものです。研究の歴史はけっこう古く,また海外では心理学の論文にもよく登場する,価値観の分類法です。 10の価値観は,次のようになっています。ただしそれぞれの日本語訳については,おそらく定訳があるわけではないように思いますので,参考までに。 皆さんなら,どの価値観を求めるでしょうか? 4つにまとめるこの10種類の価値観ですが,さらに4つにまとめることができます。

パーソナリティの再現性

パーソナリティ特性は実生活に関連するのでしょうか。このnoteの記事でも,いろいろな実生活上の行動や結果にパーソナリティ特性が関連する論文を紹介してきました。 こういう問題を扱うときの難しさは, ◎結果が再現されるのか ◎関連の大きさはどれくらいなのか という点をちゃんと検討するところにあります。 パーソナリティと実生活のさまざまな問題との関連の大きさはやはりそれほど大きなものではないため,たまたまその関連が見られたわけではなく,繰り返し観察されるということを示すことに意

おおまかなタイプに分けるとどうなるか

人間をその性格によって大まかに分類すると何種類に分かれるか,という研究があります。 私たちは分類するのが大好きといってもいいくらいです。学問の基本も分類です。世の中にあるあらゆるものを分類して,記述して,整理することからものごとの理解は始まります。 人間に対しても同じで,古来から分類して理解しようとしてきました。さて,研究ではどうなっているでしょうか。 心理ゲーム普段目にする心理ゲームの多くも,分類に基づいています。たとえば「あなたはどれを選びますか?」という形式のもの

一次元の性格

性格特性をあらわす言葉を辞書から抜き出し,整理する歴史についていくつかの記事を書いてきました。 ゴルトンやオールポートによる辞書から単語を抜き出す研究についてはこちらの記事にまとめました。 抽出した単語をまとめていく経緯についてはまたどこかで書く機会があると思います。数十年経って,ビッグ・ファイブ・パーソナリティという,5つのパーソナリティ特性で人間全体のパーソナリティを要約できることがわかってきました。 ただし,5つではなく6つだ,というHEXACOモデルの研究もあり

性格特性は5つじゃなくて6つです!

以前の記事で,辞書から性格を表す言葉を抜き出すことで,人間全体の性格(パーソナリティ)がいくつからできているのかを調べる研究の歴史があったことを説明しました。 →辞書から性格用語を抜き出す助手の仕事 そこから,おおよそ5つのパーソナリティ特性で全体を説明する,ビッグ・ファイブ・パーソナリティという枠組みができあがっていったことにも触れました。 ビッグ・ファイブ・パーソナリティを紹介する記事は次の通りです。 ・外向性 → 外向性は外交性でも社交性でもありません ・神経症傾

まじめな性格の人は無理をしているわけではありません

ロボコップという映画を観たことはありますか? 舞台は近未来のデトロイトです。ギャングに殺された主人公である警察官の脳と内臓だけを残してロボットに改造されたロボコップが,次々と犯罪者を逮捕していきます。しかし,自身を改造したロボット警察を作る会社の副社長がマフィアと結託してロボコップを殺そうとするなど,陰謀に巻き込まれていきます。 このロボコップ,「公益に奉仕する」「弱い者を守る」「法を守る」というロボット三原則というルールに縛られています。 (ただしSF作家アイザック・ア

「やさしい人」の欠点

さりげない行為で相手が困っているであろうことをフォローしたり,気配りをしたりする人がいます。 次の人が入ってきそうなところで扉を押さえておくというのもそうですし,お年寄りや妊婦さんにさりげなく座席を譲るということも,困惑の表情を浮かべている人がいればその様子を察知して声をかける,といったこともそうです。 正直言って,私はそういうのが本当に苦手なのですよね……。 さりげなく他の人のことを考えてさっと行動できる人には何度か会ったことがあるのですが,本当にそういう行動ができるこ