見出し画像

外向性と精神病理の関連は?

「内気な性格をなんとかしたい」と考える人は多そうです。言い換えると,内向的な性格を外向的な性格にしたい,ということになります。

どうして多くの人は,内向的な性格を外向的な性格にしたいと考えるのでしょうか。

ところで,外向性をどうしても「外交性」と書いてしまう人を見かけます。それだけ,ポジティブな対人関係のイメージが強いのでしょうか。

外向的であること

では,外向性とはどのような内容の概念なのでしょうか。

上の記事でも書いているのですが,外向性の中心的なはたらきは,ポジティブな反応をもたらすことに対する感受性です。それは対人関係だけでなく,日常的な活動でも同じです。活動的で積極的で陽気で話し好き,ひとりで静かにしているよりも皆でわいわいと楽しく過ごしている方が心地よく,危険の少ない乗り物や遊びよりもスリルのあるものの方に魅力を感じます。楽しそうに笑っている姿も外向的な人の特徴で,日常の生活の中でポジティブな感情をよく感じています。

このように,外向的であることは社交的であることにも関連するのですが,それだけが外向性の特徴ではないのです。むしろ,どんどん刺激を求めていくイメージです。アメリカでは「パーティ好きな人」が典型的な外向性の高い人として描かれます。

大学で耳にする最近の言葉で言えば,ウェイ系が近いかも……と思ったりします。

そう考えると,「内向的だと言っている皆さん,ウェイ系になりたいですか?」と聞いてみたくなるのですが……どうでしょうか。

外向性の階層構造

「外向性」というのは,ひとつの数直線で表されるようなものなのですが,その中身を分けることができます。まるで,数学の学力を代数,幾何,関数,確率・統計などにわけ,さらにその中身を細かく,代数の中に一次方程式,二次方程式,連立方程式,素因数分解とわけていくようなものです。全体として「数学の学力」なのですが,その中身について数学の各領域の学力もテストで検討することができます。

下で紹介する論文で,外向性の構造をまとめています。なお,1対1で対応していない部分もあるので,以下の構造はおおよそこういうものだと思ってもらえば良いと思います。また,日本語訳は定訳がないものもありますので,多くは仮のものだと考えてください。

大きく分けて,外向性は人に向かうものと活動に向かうものを含んでいることがわかります。

◎外向性(Extraversion)
→共同的外向性(Communal Extraversion)
  →社交性(Sociability)→群居性(Gregariousness),暖かさ(Warmth)
  →元気さ(Liveliness)→肯定的情動性(Positive Emotions),活動性(Activity)
→主体的外向性(Agentic Extraversion)
  →大胆さ(Venturesomeness)→刺激希求性(Excitement Seeking)
  →支配性(Dominance)→断行性(Assertiveness)

外向的であることは健康か

外向的であることは,健康の証なのでしょうか。それとも,外向性の高さも何かの問題に結びつくのでしょうか。

そういった問題に取り組んだ研究が,この論文(Extraversion and Psychopathology: A Multilevel Hierarchical Review)です。

ここから先は

852字
【最初の月は無料です】心理学を中心とする有料noteを全て読むことができます。過去の有料記事も順次読めるようにしていく予定です。

日々是好日・心理学ノート

¥450 / 月 初月無料

【最初の月は無料です】毎日更新予定の有料記事を全て読むことができます。このマガジン購入者を対象に順次,過去の有料記事を読むことができるよう…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?