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身の回りで起きたことは自分の責任だと思いますか?

早速ですが,次の質問に答えてみてください。

1. 人生は,だいたい運によって決まるものだ
 …… いいえ・はい
2. 幸福になるか不幸になるかは,自分の選択によるものだ
 …… いいえ・はい
3. 努力をすれば,たいていのことは達成できるものだ
 …… いいえ・はい
4. 人生というものは,ギャンブルのようなものだ
 …… いいえ・はい
5. 何でもたいてい自分で決断した方がうまくいくものだ
 …… いいえ・はい
6. 自分の身に起きることは,自分ではどうしようもないものだ
 …… いいえ・はい


採点方法

項目の番号のうち,
◎2.と3.と5.の「はい」の数を数えてください → 得点I(  )
◎1.と4.と6.の「はい」の数を数えてください → 得点E(  )

そして,得点Iから得点Eを引いてください → 得点(  )

引いた得点は,プラスになったでしょうか,マイナスになったでしょうか。

プラスになった場合は「内的統制の所在」の傾向が強く,マイナスになった場合は「外的統制の所在」の傾向が強いと考えてください。

なお,これはあくまでも目安ですので「絶対にそうだ」と考えることはやめておきましょう。

日本語で統制の所在を測定する尺度は,これまでにもいくつか開発されています。実際に測定したいときには,論文を参照してください。

統制の所在

統制の所在(Locus of Control)という概念があります。この概念は,1950年代に心理学者ロッターが提唱したものです。ずいぶん古い概念ですよね。しかし,パーソナリティ心理学の中でもこの概念は重要で,長い間,盛んに研究されてきた概念のひとつでもあります。なんでも,1950年代後半から70年代までに,1000本以上の論文でこの概念が取り扱われたとか。

何か目標があるとき,その目標に対してどれくらい価値を認識するかによって行動が変わってくることは想像がつくのではないかと思います。やっても意味がないと思うことについては,行動しようとは思いませんからね。どのとき,その目標や価値に対してどれくらい期待をもつかによって,やはり行動は変わってきます。入試という目標があるとき,それに価値があると考えたとしても,それを達成する期待ができるかどうかで,勉強への取り組み方は変わってくることでしょう。

このような,物事に対する一般的な期待という観点から個人差を考えるのが,統制の所在という概念です。

何かの結果が自分の努力,能力,技能によって生じるのだという信念をもつことを,内的統制の所在(Internal Locus of Control)といいます。

それに対して,何かの結果が運や偶然や自分以外の他者によって生じるのだという信念をもつことを,外的統制の所在(External Locus of Control)といいます。

先ほどの得点がプラスになった人は前者の傾向が強く,マイナスになった人は後者の傾向が強いかもしれないということです。

統制の所在と自己責任論

何となくこの考え方は「自己責任論」にも通じるように思えます。しかし,内的統制の所在と自己責任論は,自分自身について物事の原因を考えることと,それを他者の結果にも当てはめるかどうかというところに違いがありそうです。

自分自身がかかわる結果について,「それは自分の責任だ」と考えるうちは良いのですが,それを「あなたに起きた結果はあなたのせいなのだから自己責任だ」と他者を糾弾するようになると,少し違うものになるように思います。

ただし,両者の考え方は共通しますので,紙一重ではありますが。

統制の所在に関連すること

さて,この統制の所在ですが,どういうことに関連するのかをまとめてみます。

◎内的統制者の方が,達成行動に結びつきやすい
◎内的統制者の方が,政治的活動を活発に行う
◎内的統制的な児童の方が,自主性が高い

などなど,基本的に内的統制の所在の傾向が強い人の方が,外的統制の所在が強い人よりも好ましい傾向があるという研究が多いようです。それはなんとなく予想がつきそうなことですよね。

発達変化

今からもう30年以上前の論文ですが,統制の所在の発達変化を検討した研究があります。

この研究では,中学生4310名,高校生1416名,大学生1842名という大規模な調査が行われています。いまでも,この年代にこの規模で調査を行うのは,なかなか難しいのではないでしょうか。

さて,統制の所在の得点なのですが,中学→高校→大学にかけて,約54点→約51点→約50点というように,少しずつ下がっていく傾向が見られました。男女それぞれで平均値を見てもほとんど変わらず,男女ともに少しずつ下がる傾向が見られました。

さて,この研究結果から,日本では
学校段階が上がっていくと外的統制の傾向が増える
ということが言えそうなのですが,実は海外では多くの研究が,
◎学校段階が上がると内的統制の傾向が増える
とされているようなのです。

日本と海外(特に当時の欧米の研究結果)で,発達的に逆のトレンドが見られるという点は興味深いところです。

日本の教育の問題なのでしょうか……。

時代変化

統制の所在の時代変化を検討した海外の論文があります(It's Beyond My Control: A Cross-Temporal Meta-Analysis of Increasing Externality in Locus of Control, 1960-2002)。

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