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「私は誰ですか」に答えるテスト

「私は何者だろう」とか「どうして他の家じゃなくてこの家に生まれたのだろう」とか「どうしていまこの時代に生まれてきたんだろう」という疑問は,思春期の頃に一定数の人が経験することのようです。そういうことを考えたことはありますか?

そういう経験のことを,自我体験といいます。私の後輩が研究していた現象ですので,印象に残っています。


私は誰ですかテスト

20答法という心理検査を知っていますか?とても簡単で実施しやすい検査ということもあり,全国の心理学の授業でもデモンストレーションとして行われているのではないかと思います。

20答法はクーンとマクパートランドの1954年の論文で取り上げられた,Twenty-Statements Testと呼ばれる調査方法のことです。

ただ,もとの論文はAmerican Sociological Reviewという雑誌に掲載されています。心理学ではなく社会学の雑誌なのですよね。

An empirical investigation of self-attitudes.

20答法をやってみよう

20答法では,「私は」から始まる文章を作ることを20回繰り返します。ぜひやってみてください。

「私は誰ですか?」を考えて,文章を作ってください。
1. 私は…
2. 私は…
3. 私は…
4. 私は…
5. 私は…
6. 私は…
7. 私は…
8. 私は…
9. 私は…
10. 私は…
11. 私は…
12. 私は…
13. 私は…
14. 私は…
15. 私は…
16. 私は…
17. 私は…
18. 私は…
19. 私は…
20. 私は…

どうでしょうか。最初のいくつかは簡単に埋めることができると思うのですが,後半になるとなかなか難しいのではないでしょうか。

20個すべてを埋めることができない人もけっこういます。私も以前やったときにはなかなか埋めることができませんでした。「私は」から始まる文章を20個も埋めることができない人生ってなんだろう,と自問自答してしまったことを思い出します。

合意反応と非合意反応

クーンとマクパートランドの論文では,20答法の回答を2種類に分類しています。

合意反応(consensual references):集団や階級を参照する内容(例:生徒,少女,教師,シカゴ出身,バプティスト派,学部生,長男,など)
非合意反応(subconsensual references):解釈を必要とする内容(例:幸せ,退屈,よい学生,体が重い,よい夫,面白い,など)

20答法に書かれた内容を最初から見ていくと,合意反応が早いうちに出てきて,非合意反応があとのほうに出てくる傾向があります。

回答のコツ

日本語で「私は」から始まる文章を埋めるには,コツがあると思うのです。書いていく途中で,「あ,この書き方(文章の枠組み)なら埋められる」という気づきがあると,一気に埋まっていきます。

20答法の最初のほうではたいてい,「私は大学生です」とか「私は○○出身です」とか「私は○歳です」とか「私は男性(女性)です」といった,所属に関連することで文章が埋められるのではないかと思います。

少し考えていくと,「私は幸せだ」とか「私は明るい」とか「私は疲れている」といったように,内面を書けば埋められるんだ,ということに気づきます。

そしてさらに,「私は……が好き(嫌い)」というフレーズでいけると思えば,その中にいくつかのものを入れて複数の文章を作っていくことができます。

さらに「私は……をしたことがある」というフレーズが思いつけば,さらに複数の文章を作っていくことができます。

このように,フレーズの枠組みが思いつくだけで,いくつかの文章を一気につくっていくことができてしまうのですよね。

英語と日本語の違い

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