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不安と抑うつの共通点と相違点

似ているけれども違うもの,というのは心理学の世界にはたくさんあります。たとえば,自尊感情と楽観性と幸福感とか,外向性と社交性とか,知能と創造性とか……研究に携わっていたり勉強していたりすればなんとか説明できますが,日常の言葉の感覚だと区別が難しくてごちゃごちゃになってしまいそうです。

ごちゃ混ぜ

“Jingle-Jangle fallacies”という言葉があります。言葉の意味がごちゃ混ぜになってしまう問題のことです。

Jingle fallacy …… 本当は違うものなのに,同じ名前がついてしまっているので同じものだと見なしてしまうこと。
Jangle fallacy …… 本当は同じものなのに,違う名前がついてしまっているので違うものだと見なしてしまうこと。

普段何気なく使っている問題でも,同じようなごちゃ混ぜになってしまう問題はありそうです。

日常語と専門用語

学問の用語の中には,すでに日常語になってしまっているものもたくさんあります。しかも,日常で使われる言葉になっていくともとの意味から変わっていってしまう,という場合も少なくありません。

心理学を授業をしていて,いちばん「これは意味が変わってしまっている」と思わされるのは「精神年齢(mental age)」という言葉です。この言葉を聞いて,おそらく皆さんが思い浮かべる意味は……

◎考え方が幼いか,大人っぽいか

ではないでしょうか。

ところが「精神年齢」という言葉は心理学用語で,辞書を見ても「知能の発達の程度を年齢で表した尺度」のことだと書かれています。これは,何歳レベルの知能検査の問題を解くことができるかを意味する用語なのです。

たぶん,ネットで検索してもこの本当の意味は検索の上位には出てきません。日常用語として広まっていくうちに,あまりに意味が変わってしまったひとつの例だと思います。

抑うつと不安の違いを示す

「抑うつ」と「不安」という言葉もよく似ています。「抑うつ」というのは,心が塞いでしまって晴れ晴れとした気分にならず,不快な状態が続いていることです。その一方で「不安」というのは,気がかりなことや心配なことがあって,将来の不明瞭さから気持ちが落ち着かないような状態を指します。

似ていますよね……そこで,抑うつと不安がいったいどのような点で違っているのかを検討した研究があります。たとえばこの論文(Network analysis of depression and anxiety symptom relationships in a psychiatric sample)です。

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