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学校の成績はどんな性格に関連するのか

どんな特徴をもつ子どもの学力が伸びるのでしょうか。21世紀に入ってから,この謎を明らかにしようとする研究が世界中で行われてきています。

それは,大規模な調査を何年もかけて行うプロジェクトから,将来の予測をする研究がなされてきたことを反映しています。

そしてさらに,その個別の研究をレビューし,統合する研究も行われてきたことが大きいといえます。

パーソナリティとメタ分析

やはり,基本的に検討されるパーソナリティ特性は,ビッグ・ファイブ・パーソナリティです。ビッグ・ファイブそれぞれの説明はマガジンにまとめてありますのでどうぞ。

また,複数の研究結果を統計的に統合していく研究手法を,メタ分析といいます。

それぞれの研究で得られる結果は,研究によってまちまちだったりします。そういった論文や学会発表される結果を集めて,統計的に統合するということができます。メタ分析を行うと,あれこれ研究はあるけれども「実際にはこのくらいの関連や差なのか」ということがわかってきます。多くの研究を統合するメタ分析は価値も大きくなります。ただし,まだ十分に研究が蓄積していない段階で行ってしまうのはやや問題もあるかもしれないと思うときもあるのですけれども。

パーソナリティと学業成績のメタ分析

個別の研究をメタ分析で統合すると,個別の研究ではわからないような新たな発見に結びつくことがあります。多くの研究で検討されてきたビッグ・ファイブ・パーソナリティと学業成績との関連を統合する研究を見てみましょう(A meta-analysis of the five-factor model of personality and academic performance)。

データベースで文献を検索し,パーソナリティと学業成績との関連について必要な情報が掲載されているものを選んでいきます。この選ぶ作業が,メタ分析でいちばん面倒なところかもしれません。ずっと論文を読んでいって,必要な情報が書かれていないときはガッカリしてしまいます。

最終的に,80本の文献が選択されました。そのうち63本は刊行された論文,17本は学位論文です。もちろん,調査に重複がないことを確かめるのもメタ分析をするときには欠かせません。そこもまた,気をつかうポイントですね。とにかく,全体で7万人分以上から得られた,学業成績とパーソナリティとの関連の情報が集められました。

学校段階も分けています。初等教育(小学校レベル),中等教育(中学・高等学校),高等教育(専門学校や大学)という分け方です。

関連は

さて,学業成績とパーソナリティとの関連はどうなったのでしょうか。シンプルに統合された相関係数を見てみると,次のようになります。

◎外向性:r = -0.01
◎情緒安定性:r = 0.01

このあたりは,ほとんど学業成績に関連がなさそうです。

◎協調性:r = 0.07
◎開放性:r = 0.10
◎勤勉性:r = 0.19

この3つの特性は,大きくはありませんが学業成績に関連しているようです。またこの研究では,知能についても先行研究の結果を統合しています。

◎知能:r = 0.23

このような値ですので,勤勉性よりも少しだけ高い程度だということが分かります。むしろ,勤勉性が知能の次に学業成績に関連する心理的な個人差特性だということがわかります。

学校段階と関連

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