世の中には，いろいろな依存を生み出す行動の領域があります。ネットもそうですし，飲酒や喫煙，薬物もそうですよね。

そして，もうひとつ世界中で大きな問題を引き起こすのが，ギャンブルです。

ギャンブルとは

日本で公式に認められている賭け事は，競馬に競輪，競艇にオートレースです。「パチンコはギャンブルなのでは？」と思う人がいるかもしれませんが，建前上はお金をかけていないことになっています（特殊景品と呼ばれる景品を介して換金するのですが……）。

考えてみると，ギャンブルとはどういうものを指すのでしょうね。辞書を見ると，「金や物などをかけて勝負事をすること」と書いてあったります。

Wikipediaにもまとめられているのですが，賭け事を大きく分けると，
◎勝負ごとの結果に参加者が関与できないもの（賭事）
◎勝負ごとの結果に参加者が関与できるもの（博戯）
の2つになるようです。

とはいえ，その境目も曖昧です。公営賭博やルーレットのようなかけ方は「結果に関与できない」賭け事です。麻雀やパチンコ，賭けゴルフや賭けポーカーなどのゲームは，偶然の要素もありますが結果に参加者が関与できます。

ギャンブルと金融商品

では，金融商品はどうでしょうか。事前にある程度，情報を手に入れて，市場のタイミングを見計らってその商品を買います。うまくいけば利益が手に入りますし，失敗すれば損失を計上します。保険商品もそうですよね。いつ病気になるか，事故に遭うか，天変地異が起きるか，もともと保険はどのような偶然性に賭けることから生まれたと言います。

船を運行する人が積み荷を担保にお金を借りて，無事交易が成立したら利子をつけて返すという制度があったそうです。また，もしも嵐などに遭って積み荷が無事でなければ，借金の返還が免除される契約になっていたそうで，その点が今の保険と共通しています。貸す側にとっては，交易の成功に対して賭けることになるというわけです。

ギャンブルと宝くじ

では宝くじは？宝くじと丁半博打（サイコロを振って偶数か奇数かに賭ける）とは何が違うのでしょうか。どちらも自分は結果に関与できず，利益と損の結果が生じます。今はどうしているかわかりませんが，宝くじはぐるぐる回る的に向かって矢を射ることで結果を出していました。茶碗の中でサイコロを転がすのとそんなに違いはありません。違うのは，当たる確率でしょうか。ほとんど当たらなければくじで，もっと当たるものはギャンブルということ？

ではさらに，ロト宝くじはどうですか？自分で数字を選びますよね。それはポーカーやルーレットとは違うのでしょうか。さらにスポーツ宝くじはどうですか？競馬や競輪と何が違うのでしょう。確率が限りなく低くなると，ギャンブルではなくて宝くじになる，という理屈なのでしょうか。

このように考えると何がギャンブルなのか，境目はなかなか曖昧なように思います。

射幸心

ギャンブルかどうかを考える際のひとつのポイントに「射幸心」があります。射幸心というのは，「思いがけない利益や幸運を望む心」です。射幸心をいだかせるものは，常習性を導きます。つまり，それをやめにくくなるということです。

どうしてサッカーくじがギャンブルではなく宝くじだとされるのか，その根拠は，当選確率が非常に低いため，射幸心が生まれにくいという理由づけがされるのです。それに対して，競馬や競艇はそこまで当たる確率が低くないので，ついくせになってしまうからギャンブルだとされます。射幸心をあおるようなギャンブルは勤勉によって対価を得ようとする健全さを損なう，だから規制をするべきであるという理屈です。

でも，株式投資やレバレッジを効かせた通貨投資，仮想通貨への投資って，けっこう人々の射幸心をあおるのではないかと思うのですけどね……。

問題のあるギャンブル

いずれにしても，ギャンブルが実生活に支障をもたらすと「問題だ」とされるようになります。日常生活に対して有害な結果をもたらしているにもかかわらず，どうしてもギャンブルをやめることができなくなってしまう状態を，問題のあるギャンブルと言います。

そういう問題のあるギャンブルは，何かパーソナリティ特性と関連するのでしょうか。

アフリカのナイジェリアで問題のあるギャンブルとダークなパーソナリティとの関連を検討した研究があります。この論文（Associations of Dark Triad traits and problem gambling: Moderating role of age among university students）です。