タバコを吸う人は一定方向に性格が変わっていく

何かをすることとしないことは,性格を違う方向に変えていくものなのでしょうか。

たとえば運動とか,勉強とか,生活習慣とか,テレビにネットに友人関係……何をし続けると,性格が変わっていくものなのでしょうか。

良くない行動

世の中には「良い」とされる行動と「良くない」とされる行動があります。いろいろな行動が思い浮かぶのではないでしょうか。

たとえば,他の人を助けたり社会のためになるような向社会的行動は,「良い」とされる行動のひとつです。

「良くない」とされるような行動には,何があるでしょうか。人に迷惑をかけたり,犯罪に手を染めたり,攻撃したり……という行動が思い浮かぶかもしれません。

微妙な判断

ときに「良い」「悪い」の境目は曖昧になったり,場所や文化によって違ったり,時代によって変化していったりもします。

それまで「良い」とまではいいませんが特に悪いわけでもなかった行動が,時代の変化によって「良くない」「悪い」行動に変わってしまうことがあるのです。

これまでnoteに何度も書いてきた,そのような特徴を表す行動のひとつが,喫煙です。平成の時代を通じて,一気に喫煙者は減少し,タバコを吸う行為に対する印象も大幅に変わっていきました。

昔は「男性の振るまいとしてかっこいい行為」だった喫煙は,「あまり良いとは言えない行為」へと変化していったのです。

ドラッグで性格は変わる

もっと「悪い行為」で性格が変わるという研究もあります。

たとえば,違法な薬物です。これまでに,サイケデリック・ドラッグと呼ばれる,幻覚や妄想を引き出すような違法薬物を使うと,開放性のパーソナリティ傾向が高まるという研究があります。

喫煙は何を変える

では,喫煙は性格を変えるのでしょうか。

このことを確かめるには,ひとつは何人かの人をタバコを吸い始める人と吸わないままでいる人にランダムに分けて,片方のグループの人々には「これから毎日タバコを吸い続けてください」とお願いすることです。そして,吸い始める前としばらく経った後でパーソナリティの得点を比較します。

いやまってください……そんなことは,倫理的に許されることではありませんよね。ランダムに選んだ人に対して「これから毎日タバコを吸い続けてください」とお願いするような研究は,とてもできるようには思えません。

そこで,自然にタバコを吸い続ける人と吸わない人を比較するという次善の策を考えることができます。無理やりタバコを吸わせるような無茶なことにはなりません。ただし,本当に変化といえるかどうかは微妙なものになってきます。

そこで調査を2回行って,本当に上昇するかどうかを考えましょう。まず調査を行って,その後に追跡調査をします。タバコを吸い続ける人とそうではない人を比較して,何年か後にもう一度調査をするのです。そのように,同じ人々を追跡して調査することを,縦断的研究とか縦断的調査といいます。

縦断的研究から

大規模なデータセットを分析することで,喫煙がパーソナリティに影響するかどうかを検討した研究があります。この論文(Cigarette smoking and personality change across adulthood: Findings from five longitudinal samples)です。

この研究では,5つの縦断的なデータセットを分析しています。全体で15,572名分のデータ,20歳から92歳までの回答が含まれています。

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