似た人どうしが惹かれ合う
恋愛の話でも結婚の話でも,似た者どうしが惹かれ合うのか,違う人の方が惹かれ合うのかということが問題になることがあります。
辞書に載っている言葉なのかどうかはよくわからないのですが,「同族嫌悪」という言葉を使うことがあるようです。「同じ種類や系統のものを嫌悪すること」とか「自分と同じ趣味・性質を持つ人に対して抱く嫌悪感」という意味で使うようです。
近いのか遠いのか
いったい,自分と近い相手に惹かれるのか,遠い相手に惹かれるのかについては,色々な話があってそれがまた伝言ゲームのように伝わって,大混乱状態ではないかと思うときがあります。
たとえば,よく引き合いに出されるのが下の記事のような話です。「女性が自分の遺伝子とは遠い遺伝情報を持つ男性のニオイに惹かれる」という研究結果から,「遺伝子的に遠い相手に惹かれるものだ」という話に展開していきます。
そしてこの話からさらに,「一般的に,自分と似ていない相手に魅力を感じるものなのだ」という話へとさらに飛躍していくようなことがよくあります。
ところが,それとは違う話もあるのです。
近い相手に
こちらの記事には,「身長やBMIといった特徴を決める遺伝子マーカーから配偶者の身長とBMIを予測できる」のであり「無作為な配偶者選びというよりは,同じような特質を持つ相手を配偶者として選ぶ性選択を行なっている」ということが書かれています。さっきは「遺伝子的に遠い相手に惹かれる」という話だったのに,こっちは「遺伝子的に近い相手に惹かれる」という話になっていて,「いったいどっちが正しいのですか?」と思えてきます。
カップルの研究
さて,心理学では付き合っているカップルや,結婚している夫婦を対象にした研究がこれまでに膨大に行われてきています。
そこでは,だいたい「カップルは互いに似ていないよりも似ている方が関係性に良い結果を生み出す傾向がある」という結論が多いと言えます。
たとえばこの研究です(Couple Similarity and Marital Satisfaction: Are Similar Spouses Happier?)。
この研究では,イスラエルの248組のカップルを対象にした調査を行っています。
類似性の表現方法
この手の研究をするときには,カップルの類似性をどのように数字で表現するかということがひとつの大きな問題になります。
ひとつは「得点の類似性(差)」です。これは,ある得点においてカップルの片方の得点からもう片方の得点を引いて絶対値を得るものです。
もうひとつは「プロフィールの類似性」です。この指標に関してですが,個人の中で何が高くて何が低いかを問題にします。そして,カップルでその高低の順番のパターンが一致している程度を数値にします。たとえばカップルそれぞれから得られたさまざまな得点から,カップルの相関係数を算出するのがひとつの方法です。
カップルのAさんとBさんがいるとします。そして,Aさんは外向性が10点,協調性が8点,勤勉性が6点だとします。それに対してBさんは外向性が9点,協調性が8点,勤勉性が7点だとします。
この時,カップルの得点の差は,
差得点 = |10 - 9| + |8 - 8| + |6 - 7| = 1 + 0 + 1 = 2
となりますので,2点となります。
プロフィールの類似性は,個人の中でどれが高くてどれが低いかを問題にします。この場合,AさんもBさんも,外向性がいちばん高くて勤勉性がいちばん低いので,プロフィールは一致していると考えるというわけです。
さて,先ほどの論文でも,カップルの得点差とプロフィールの類似度を得点にして,結婚満足度との関連を検討しています。
結果はどうなるのか
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