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生まれた季節でIQは変わるのか?

生まれ月は知的能力に関係するのですか?という疑問も,素朴でよく出されるものです。果たして,関連はあるのでしょうか。

たとえば,星座占いでも「頭の良い星座」ということは言われるようです。どうやらいちばん頭が良いとされる星座は「双子座」らしいのですが,ということは5月21日から6月21日生まれになります。本当にその誕生日の範囲の人々は知能検査の結果が高かったりするのでしょうか。

ちなみにすでに絶版で古書しかないのですが,イギリスの心理学者アイゼンクたちが書いた『占星術—科学か迷信か』という本があります。もし機会があれば,ぜひ読んでみてください。

学年の開始月

また,「生まれと知性には何か関連があるのでは?」という気持ちも分からなくはありません。日本では「4月・5月生まれが人生で有利なのでは?」という考えには根強いものがあるからです。「やっぱり3月生まれに比べれば4月生まれは1年近く早いのだから,学校で有利になるのでは?」という意見です。

ただ,「4月生まれが有利では?」となるのが環境の影響ならば,学校が4月から始まる日本だけの限定されたものです。いろいろな国がありますが,多くの国は9月から新学年ですので,「9月・10月が有利なのでは?」という話になってしまいます。

そのほか,シンガポールでは学年の開始月が1月ですし,オーストラリアは1月末か2月初め,韓国は3月ということです。どの国に生まれるかによって「有利な生まれ月・不利な生まれ月」が変わってしまいますよね。これは大変です。

本当に関連するのか

では,実際に生まれ月が知能指数に関連するという証拠はあるのでしょうか。イギリスの大規模な調査を使って検討した研究があります。この論文(Season of birth and childhood intelligence: findings from the Aberdeen Children of the 1950s cohort study)です。

分析の対象になっているのは,イギリスのスコットランドにある都市アバディーンで1950年代に始められた縦断調査プロジェクトのデータです。このプロジェクトでは,1950年生まれから1956年生まれまでの12,150人の子どもたちが調査の対象になっています。女性比率は48%だそうです。

生まれ月で知能指数は変わる?

さて,調査に参加した子どもたちは,7歳,9歳,11歳の3時点で知能検査をしています。7歳の時は,学校に入るときに知能検査をしているようです。それぞれの年齢のときの知能検査の結果は,生まれた月に関連していたのでしょうか。

さて,結果なのですが,9歳の読解力と11歳の数的な能力については,少しだけ生まれ月の効果が見られたそうで,8月や9から12月生まれは2から4月生まれよりも低くなる様子が見られました。

ところが,学校に入学した年齢やその他の変数を統制すると,何月生まれかという効果は消えてしまいました。学校に入る段階で知能検査をするのであれば,入学する時点での月齢が知能検査の結果に影響してしまいますからね。とはいえ,その影響を考慮に入れたとしても,何月生まれかの効果は微々たるものです。

気にしなくても良い

要は,知能に対する何月生まれかという効果はきわめて小さい,取るに足らないような違いに過ぎず,それよりもちゃんと学校に通うかとか仲間との関係とか,それ以外の環境上でみられる効果のほうがよほど大きいということのようです。

ですので,何月に子どもが生まれようと,あまり気にする必要はありません。実際に何月生まれかということよりも,親が「自分の子どもは何月生まれだから」という先入観をもって育てていくことの方が,影響力が大きいかもしれませんからね。目の前の子を大切に,大きな関心を持って接していきましょう。

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