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まじめな性格の人は無理をしているわけではありません

ロボコップという映画を観たことはありますか?

舞台は近未来のデトロイトです。ギャングに殺された主人公である警察官の脳と内臓だけを残してロボットに改造されたロボコップが,次々と犯罪者を逮捕していきます。しかし,自身を改造したロボット警察を作る会社の副社長がマフィアと結託してロボコップを殺そうとするなど,陰謀に巻き込まれていきます。

このロボコップ,「公益に奉仕する」「弱い者を守る」「法を守る」というロボット三原則というルールに縛られています。
(ただしSF作家アイザック・アシモフによるもともとのロボット三原則は「人間への安全性」「命令への服従」「自己防衛」という3つです)

ロボット三原則を扱う多くのSF作品と同じように,このルールへの絶対的な服従と現実との葛藤が,このシリーズのひとつのポイントになります。
ロボコップがこのルールに縛られることで,観ている側には「もう少し臨機応変にすればいいのに!」という気持ちも生まれてきます。

それに対して,もう1つ取り上げたいのは,ロバート・ダウニーJrが演じるアイアンマンです。

アイアンマンは天才科学者トニー・スタークが作り出した戦闘スーツを自身が装着した状態のことです。同じような鉄製のヒーローでありながら,このアイアンマンことトニー・スタークは,約束を守らなかったりルールを無視したり,ずいぶんルーズな印象を与える性格をしています。

もっともロバート・ダウニーJrが演じると,大会社社長で天才科学者のトニー・スタークでも,シャーロック・ホームズでさえも,ちょっとルール無視かつゆるーい感じになる印象があります。

この2つのキャラクターを分けるような性格特性が勤勉性Conscientiousness)です(この英単語,字数が多いですよね…)。
これは誠実性と呼ばれることもありますし,英単語の頭文字Cで表されることもあります。

1990年代まで,パーソナリティの研究者で勤勉性を研究しようとする人はほとんどいなかったそうです。『成功する子 失敗する子』という本の中で,アメリカのパーソナリティ心理学者ロバーツの話が出てきます(彼は日本にも来たことがあります)。ずっと誠実性はパーソナリティ特性の中でも「厄介者」だと思われていました。勤勉性という特性は保守的で,宗教色が強く,自由な社会に反するようなイメージで捉えられていたということです。

ところが現在,勤勉性の重要性に世界中の研究者が注目しています。
勤勉性はビッグ・ファイブ・パーソナリティの特性のひとつとして重要な性格特性であり,学業成績社会的な成功寿命など社会にとって欠かせない結果をもたらすことが明らかにされてきたからです。

目次

・誠実性の内容
・無理をしている?
・自己コントロール
・長生きする?
・成功する?
・つまらない
・欠点は
・評価の変遷

誠実性の内容

勤勉性(誠実性)の特徴のひとつは,計画にこだわることです。数ヶ月や数年かかる長期的な計画である場合もありますし,今日のうちにこなすべき短期的な計画の場合もあります。勤勉性の高い人は計画を立てるのが好きで,かつその計画を注意深く実行していくことに心地よさを感じます。

また,勤勉性の高い人は,ものごとをうまくやり遂げられるだろうという見通しをもち,ものごとを整理整頓してすっきりと考えることが好きです。また,義務感が強く真面目で,目標を達成しようとする強い意欲や動機づけももっています。また,単に無計画に突き進むのではなく,よく考えてものごとを進めようとするのも勤勉性の特徴です。

勤勉性の低い人は,これらの特徴の逆方向になります。つまり,あまり計画を立てずにいきあたりばったりで,目標をやり遂げるかどうかの見通しも曖昧であり,しなければいけないことの達成にもあまり動機づけられることがなく「まあなんとかなるさ」と考えるような傾向をもっているということです。

この勤勉性は,まさにいわゆるまじめさを表現した性格特性だということがわかると思います。

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