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赤ちゃんのタイプ

「赤ちゃんにも性格はあるのですか」ということをたまに聞かれます。

結論を言うと,赤ちゃんにも心理学的個人差はあります。心理学的個人差というのは,身体全体や脳神経系統のパターンや機能の個人差ということです。

また,赤ちゃんは言葉をしゃべってくれませんし,アンケートに答えてもくれません。個人差は観察して見つけることが基本になります。


気質とは

赤ちゃんの心理学的個人差は,気質(temperament)といいます。心理学で「性格」「パーソナリティ」というと,言葉が使える年齢になってからというニュアンスがあります。

昔から,より生物学的な特徴に近い心理学的個人差のことを気質と呼んでいました。赤ちゃんも言葉を使うことはできませんので,その心理学的個人差は気質と呼ばれます。

ちなみに,古い本には気質は「先天的で固定したもの」であると書かれていることが多いのですが,実際にはそんなに固定したものではありません。ただ,先天的かどうかはわかりませんが生後すぐにも個人差は生じますので,何が理由でそうなるのかはよくわかりません。双子の研究で遺伝率が推定できますが,その推定も様々のようです。

大人の気質

ただ,気質という言葉はちょっとややこしくて,大人の心理学的個人差に対しても使われることがあります。特に,古い心理学では今でいう「パーソナリティ」と同じような意味で気質という言葉が使われていたり,大人についてもより生物学的な基盤を持つと仮定されている(そういう想定のもとでの)心理学的個人差も気質と呼ばれることがあります。

厳密には,大人のパーソナリティと気質は,理論的なバックグラウンドが違っていても,研究をするうえで明確に分かれているわけではありません。結局はアンケートで測定することが多いですし,じゃあ測定された内容について,パーソナリティよりも気質のほうがより生物学的な基盤を持つかというと,そういう明確な証拠があるとも言えないと思います。

ニューヨーク縦断研究

トーマスとチェスを中心として,ニューヨークで行われた有名な縦断研究は,1956年にスタートしました。サンプルの中心となったのはミドルクラスの白人130名以上でした。この人々は生まれて1980年代まで追跡調査に参加していきます。

乳幼児の気質

この研究では,さまざまな子どもたちの行動を記録し,親にもインタビュー調査をしています。そしてその中で,子どもたちの様子からおおきくわけて3つグループに子どもたちを分けることができることが見出されていきます。

扱いやすい子(easy child):新しい場面に慣れやすい,ポジティブな感情,安定した生活パターン

扱いにくい子(difficult child):新しい場面になかなか慣れない,機嫌が悪いことが多い,生活リズムが不規則

慣れるのに時間がかかる子(slow-to-warm-up child):新しい場面に慣れるのに時間がかかる,活動水準が低い

母親泣かせ

この中でも,親にとって大変なのが扱いにくい子(difficult child)でした。

抱っこしていないとなかなか落ち着かず,ベッドに下ろすとすぐにぐずり始め,なかなか親の手を離すことができません。生活リズムも不規則で,ますます親にとっては手がかかる子どもに思えます。

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