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テストで人生が決まる

パーソナリティ検査の作り方や信頼性・妥当性の検討方法,調査をするときにどんなバイアスが影響してくるかなど,授業で扱うことがあります。

そういう授業後に提出された学生の感想を見ていると,「パーソナリティ検査が洗練されると,それが使われて人生が決まってしまうディストピアになってしまうのではないか」といった疑問を抱く学生がたまにいます。

未来予測

その気持ちはよくわかります。まだ何もしていないのに将来犯罪者になると予告される映画マイノリティ・リポートのような未来を想像してしまう気持ちも理解できます。

ところが,残念ながらと言いますか良かったと言いますか,いくら研究が進んでもそこまで予測力が高い検査を作ることができるとは,なかなか思えないという現状があります。

それは喜ぶべきことなのでしょうか,それとも残念に思うべきことなのでしょうか。

すでにそういう世界に

でも実は,すでにそれと似た世界は作られていると思うのです。

大学の講義室に座っている学生たちは,それまでに何度も何度も学力試験を受け,模擬試験を受け,入試を受験し,その結果としていまそこにいます。

そして,学力試験も「個人の何らかの心理的な特性を測定するテスト」に変わりはないのです。学力も知能もパーソナリティも価値観も態度も,直接的に目に見えたり触れたりできるような実体を伴った「もの」ではない,なにかを説明するために仮定された「概念」だからです。そして,テストはそれらの概念をある一定の範囲で測定するツールに過ぎません。

完璧ではない

テストには誤差がつきものです。完璧に測定できるテストというものはありません。

必ず,「本当はそうではないのにこんな結果が出てしまった」という人が存在します。人間がすることですから,テストを作るときも完璧とは生きませんし,テストを受ける時にもその時の調子や偶然の要素が多々入り込んできます。

将来予測

テストが将来をうまく予測できるかどうかは,実際に予測をしてその予測の精度を確かめて,うまくいかないなら結果をフィードバックしてテストの内容を刷新していくシステムが必要です。

何年,何十年も先の人生を予測するようなテストの精度を確かめるためには,それこそ何十年もの時間がかかります。私たちが目にするテストは,本当に人生を予測するような精度を持っているのでしょうか。

完璧ではない振り分け

世の中はある程度の適材適所に人々を割り振ることで成り立っています。どこかで何かの形で,より適切な進路を示してそちらへと誘うようなシステムが必要になることもあります。

この問題を考える時に,「すでに世の中では完璧とは程遠いテストで人を振り分けるシステムが稼働している」と捉えておくことは大切ではないかと思います。

そして,そこから「ではどうする?」ということを考え始めても良いのではないかと思うのです。

時にその延長線上には,人々の排除や強制,偏見や差別が待ち構えています。常に思慮深くありたいものです。

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