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中年になると自信満々になる

学生の皆さん,今はあまり自分に自信がない人も多いかもしれません。何を隠そう,自分自身も学生時代はそうでしたので,皆さんの中に自分に自信がなく,将来のことも不安で,先のことがよく見えない,という人がいることはそれなりに理解しているつもりです。

まだ高校生や大学生の段階で,自分に確固たる自信をもって,将来も「この道を進むんだ!」なんて考えることができるものなのでしょうか。

確かに,周りの大人たちは「早く進路を決めなさい」「早く先の見通しを持て」「ちゃんと考えて進む道を決めるんだ」なんて言うかもしれません。でも,じゃあ,決めろと言っている大人たちは,高校生や大学生の時に先のことをちゃんと決めていたのでしょうか。......いやあ,それはどうかなあ,と疑問に思ってしまいます。

大人になった「今」だから,まるで昔からこの進路が決まっていたかのように思えるものです。あとから振り返っているから,自分が進んできた道はこの道しかなかったかのように思えるのです。だって,実際にその経路を歩んできたのは確かなのですから。道の先から振り返ると「必然」に思えるのです。しかも,もうずいぶん歩いてきてしまっていますので,これから進む先の道もある程度霧が晴れて見通すことができるのです。

そして,自分自身が若い頃は,道の先がまったく見えなかったことを忘れてしまうのです。

経験を積むということは,経験していない頃の視点を忘れさせがちなのです。偉そうにあれこれと言っている人も,昔は将来が不安だったりしたものだということは,覚えておいても良いかもしれません。


自尊感情の年齢変化

自尊感情が年齢とともに変化していくことは,よく知られています。この変化なのですが,日本でも欧米と同じような形を示すこともわかっています。

それは,どういう変化なのでしょうか。

これまでにもいくつか,年齢に伴う自尊感情の変化については研究が行われています。特に成人期については,得点の方向性は一貫しています。それは,

◎年齢が上がるほど,自尊感情の平均値は上昇していく

というものです。およそ,60代くらいまでは平均値が上昇していきます。しかも男女の得点差がありますので,

◎60代くらいのおじさんがいちばん自尊感情の平均値が高い

ということになります。「やっぱりな」と思う人はいるでしょうか?最初に書いたように,道を歩んで来ることは「自分のアイデンティティ」を確立してくることでもあります。そして自尊感情はもともと,アイデンティティ確立にも密接に結びつくと考えられていました。「自分はこの道を歩いてきたんだ」と言えることは,自分自身の自信にもつながるものだと思うのです。

もちろんこれは平均値ですので,上がる人も下がる人も変わらない人もいます。個々人のバラツキは小さくありませんので「自分は違う」と思う人もいることでしょう。でも平均値が上昇するということは,上がっていく人が多そうだということになるわけです。

そして,

◎児童期から思春期にかけて,自尊感情が低下しやすい

ということもわかっています。若者は,自尊感情が低くなりやすいのです。

もちろんこれも平均値ですので,高い若者も低い若者もいます。そう,まるで身長や体重のようなものです。高い(重い)人も低い(軽い)人もいるのですが,年齢とともに平均値は変わっていくのです。

発達変化のメタ分析

最近,この研究の決定版とも言えるような論文が発表されました。これです( Development of self-esteem from age 4 to 94 years: A meta-analysis of longitudinal studies)。この論文の著者は,ずっと長い間,自尊感情の発達変化を研究している,世界でも知られるスイスの研究者です。

この論文は,過去の研究を集めるメタ分析という研究手法を用いて,自尊感情の一生涯の発達変化の軌跡を描こうと試みたものです。メタ分析で注目したのは,縦断的なデータ収集を行っている研究です。つまり,同じ人物を追跡調査した研究というわけです。そのような研究でも,収集した研究の数は実に331本もありました。そして,その中で調査に回答しているのは実に164,868名です。しかも,年齢範囲もすごくて,4歳から94歳という広さです。

どんな変化?

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