知能はどれくいらい学校の成績を予測するのか
何かと何かがどれくらいの関連の大きさなのかを知っておくことは,ときには役に立ちます。「これとこれは関連している」と言ったとしても,その大きさによって,「関連」の意味がまったく違ってくるからです。
たとえば,身長と体重の間にはプラスの相関関係があります。身長が高い人ほど体重は重くなる傾向があり,身長が低い人ほど体重は軽くなる傾向があるからです。当たり前ですよね。
でも,その関係は「必ず」ではありません。身長170cmの人のなかにも,体重が50kg台の人もいれば90kg台の人もいます。身長160cmの人の中にも,体重が40kg台の人もいれば80kg台の人もいることでしょう。身長が高くなればなるほど,あるグループの体重の平均値は身長が低い人たちのあるグループの体重の平均値よりも大きくなる傾向があるということなのです。
身長と体重の相関の大きさ
ちょっと気になったので,手元にあるデータの中で身長と体重のデータを抜き出して相関係数を算出してみましょう。
データは,20代から60代までの日本人成人4158名(男性1962名,女性2196名)分です。
男女込みの相関係数は,
◎ r = 0.675
でした。なかなか高い値です。
しかし,男性は基本的に体も大きく身長も高く体重も重い傾向にあり,女性は体が全体的に小さいので身長も低く体重も軽い傾向にあります。ということは,男女込みで分析することで,実際以上に相関係数が大きくなっている可能性があります。そこで,男女別に相関係数を計算してみましょう。
◎男性:r = 0.482
◎女性:r = 0.343
やはり,男女込みのときよりも相関係数は低くなりました。
散布図
男女それぞれの身長と体重の関係を散布図に表してみます。
男性の散布図は次の通りです。身長が高くなるほど体重も重くなるですが,「絶対ではない」ということがよくわかるのではないかと思います。
女性はこちらです。男性よりも左下に集まりがちで,特に体重(横軸)の幅が小さくなっている様子がわかります。そして,全体の傾きがゆるくなっていて,相関係数も小さめなのが図に表れています。
知能と学業成績
前置きが長くなりましたが,ここからが今日のテーマです。
「知能が高い人ほど学校の成績が良い」という意見についてです。「そんなの当たり前だ」と思いますよね?でも「身長と体重が関連するのは当たり前」だけれども「完全ではない」というのと同じことが,知能と学業成績についても言うことができます。
では実際に,どれくらいの相関係数の大きさだと思いますか?ちょっと予想してみてください。
1.相関係数0.7より大きい
2.相関係数0.5程度
3.相関係数0.3より小さい
選択肢1は,男女込みの身長と体重の相関係数よりも大きな値になるだろうという予想です。選択肢2は,男性の身長と体重との関連くらいですよね。そして,選択肢3は,女性の身長と体重の相関係数よりも小さいという予想です。
いかがでしょうか。関連の大きさを予想しましたか?
メタ分析で確かめる
知能と学業成績の関連をメタ分析で検討した論文がありますので,それを確認してみましょう。この論文(Intelligence and school grades: A meta-analysis)です。
どのメタ分析の論文でも同じですが,学術論文データベースを使って論文が検索されました。結果で出てきた論文は335本です。そこから,メタ分析に必要な情報が入っているものを選択していきます。最終的に,166本の論文,その中に含まれている240個の数値をメタ分析に使っています。
相関係数はいくつか
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