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「ぼくのかんがえたさいきょうのげきだん」を想定しておく

僕は趣味で演劇をやりながら、本職はIT系の会社でディレクターとして働いている。プログラミングやソフトウェア開発のことはあまり分からないのだが、エンジニアたちとのコミュニケーションを円滑にするために、いわゆる「アジャイル開発」という開発手法を少しだけ学んだ。そのときに読んだ本が『アジャイルサムライ』という本で、アジャイル開発を学ぶ人はまずこの本から読むらしい。

この『アジャイルサムライ』という本はアジャイル開発に関して様々なことを教えてくれるが、その中に「インセプションデッキ」というものがある。プロジェクトを始める前に10の質問に対する答えを準備し、チーム内の目標などを擦り合わせるためのものだ。

僕は劇団を作るときや公演を打つときにこの「インセプションデッキ」を活用できるのではないかと考え、自分が関わるプロジェクトには積極的に使ってみている。もちろん、ソフトウェア開発と芝居づくりは違うものなので、インセプションデッキをそのまま使うわけにはいかないが、ある程度は思考のフレームワークとして機能すると感じている。

そして、そのインセプションデッキの中で、劇団を作るうえで応用可能だと思っているのが「Aチーム」というものだ。


自分だけのAチームをつくる


「Aチーム」というのは、アメリカのテレビドラマ「特攻野郎Aチーム」に由来するもので、要するに自分だけのベストチームというような意味だ。

演劇を一人で上演することはほとんど不可能だ。もちろん、舞台の上に一人で立つことはできるかもしれない。しかし、脚本を書いたり演出を書いたり、音響や照明をしたり、小道具、舞台監督、制作、広報、当日の受付と、演劇においてやることは多岐にわたる。自分以外の人員は全員外部から呼び寄せても良いが、毎日顔を合わせているわけではないので意思疎通が難しく、コミュニケーションコストが膨大になる。劇団の主宰ならば、自分の世界観を表現するためにどのような人物が必要かを把握し、それに向けて仲間を集めた方が良い。

もちろん、Aチームを想定したからといって必ずしもそれに見合った人員が集まるわけではない。最高の舞台をつくるためには10人の劇団員が必要なのに、現状は3人でやりくりするしかない、という場合もあるだろう。ただ、想定しないことには人は集まらない。また、どういう人がほしいかを明確にしていないと、特に必要ない人ばかりが集まってしまうかもしれない。裏方が全くいないのに役者ばかりが20人も30人も集まっても、一つの公演を作りあげることは難しいだろう。

一つの公演を作りあげるのには、おおよそ以下のような人物が必要だろう。

・劇作家
・演出家
・役者
・音響
・照明
・小道具
・舞台監督
・制作

もちろん、これに加えてチラシなどを作る「デザイナー」が必要かもしれない。あるいは、日本ではあまり見かけないが「ドラマ・トゥルク」という役職を置く場合もあるだろう。また、小劇場系の劇団は稽古の進行が地獄になりがちなので、その進行を管理する「プロジェクトマネージャー」みたいな役割をおいても良いかもしれない。

ただい、別に一人一役しかこなせないわけではないだろう。小劇場系の劇団の場合多くは劇作家と演出家は同じ人が務めることが多い。小道具や制作も、役者と兼任しているという人も多いのではないだろうか。

それぞれがそれぞれの仕事に専念できた方が質の高い仕事ができるかもしれないが、大抵の劇団は人員不足なのでそうは言っていられないだろう。しかし、それはそれで良いのだ。まずは自分たちの団体にどういう人が必要で、今はその役割を誰が担い、どこを補充したいかがわかっていることが大事だ。

また、多くの劇団では主宰が作演を行うことが多いが、この計画を作るときには、別に主宰が作演を行う必要はないと思っている。ぼくのかんがえたさいきょうのげきだんを作りあげるためにはどんな人材が必要なのか。ただそのことを考えながら作るときっと面白いと思う。

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