自分の子どもが中学生になったら読ませたい3冊の本

25歳ですよ。昨日まで15歳の少年だと思っていたのに、もう25歳。月並みではありますが、時の流れは残酷で、10年の歳月は僕を別人に変えてしまいました。主に体重が数十キロ増えました。

ところで、僕は本を読むのが好きです。小学生の頃に図書館で偉人の電気シリーズを読破したのを皮切りに、かいけつゾロリ、ズッコケ三人組、デルトラクエスト、ハリーポッターなどを嗜んでまいりました。

そんな僕が本格的に読書を好きになったのは、小説の「毒」に当てられてしまった側面が大きいと思います。でも、その頃からしっかり「毒」と触れ合えていたからこそ、こうして何とか日々を安寧に暮らすことが出来ているんじゃないかなあと思うわけです。

そこで今回は、僕の人生を振り返って、これは自分の子どもにも中学生のうちに読ませておきたいという本を5冊紹介します。

森絵都『カラフル』

これがすべての始まり。森絵都作品は大体読んでいますが、何度読み返しても『カラフル』が彼女の最高傑作だと断言できます。

輪廻転成の輪から外れた魂がもう一度生まれ変わるため、自殺した小林真という少年の身体に入り、自分が前世で犯した罪を思い出すという話。天使らしくない天使・プラプラとの会話も面白くて、スイスイ読み進めていくことができます。

しかし『カラフル』に登場する人物たちは、人間の汚さがこれでもかというくらいに溢れています。けれど、そういった汚さも認めて生きていこうという「許し」に似たきらめきが、この小説からはずっと漂っているわけなのです。

僕が特に好きなのは、次の言葉。

「三日にいちどはエッチしたいけど、一週間にいちどは尼寺に入りたくなるの。十日にいちどは新しい服を買って、ニ十日にいちどはアクセサリーもほしい。牛肉は毎日食べたいし、ほんとは長生きしたいけど、一日おきに死にたくなるの。ひろか、ほんとにへんじゃない?」

この文章にありとあらゆるものが詰まっているのですが、よくわからないなという方は、ぜひお読みくださいませ。

たぶん僕と同世代の読書好きは、一度はこの本を通ってきた人が多いのではないかなと思います。

綿矢りさ『蹴りたい背中』

19歳という若さで芥川賞を受賞した綿矢りさ。その受賞作がこの『蹴りたい背中』です。

人と接するのが苦手な女子高生が、「オリちゃん」というファッションモデルが大好きな「にな川」と友好を深めたり深めなかったりする話です。正直、今読み返しても「当時なんであんなに面白かったんだろう……」と思ったりもするのですが、それは僕がこの小説をもう何度も読んでしまったせいかもしれません。人間の薄汚いところが全部出ています。

主人公のハツとにな川の関係って絶対に恋愛関係ではないのですが、中学生の僕はこういう関係を受け入れられなくて、というか、どこか憧れていて、何だかよくわからないけど甘酸っぱい気持ちになりました。25歳になって読み返すと、「この二人ちゃんと仕事できてるかなあ」なんて思ってしまうのですが、彼女たちと同世代だった僕は、二人のことをなぜか羨望の眼差しで見つめていたのです。

苦しさがもたらす美しさというものが必ずあると思っていて。この作品を読んでも決して楽しい気持ちにはならないのですが、なぜかこの小説はいつだって清冽な空気を持って僕を迎えてくれて、宝箱をのぞくように、二人の関係を見守っていたくなってしまうのです。

綿矢りさ作品はどれも素晴らしいのですが、まず一冊読むとすれば、間違いなく『蹴りたい背中』がおすすめです。

太宰治『人間失格』

太宰は青春のはしかだ!なんて言われた時代があったらしく、僕が中学生の頃はそもそも誰も太宰に興味なんて無かったのですが、まあ多感な時期に太宰を一回読んでおくと良いんじゃないかなと思います。

中期の太宰の作品は明るく面白いので、このあたりから読んでいただいても良いのですが、まずはドーンとどストレートに『人間失格』でこじらせ度をチェックするのが良いのではないでしょうか。

世の中には『人間失格』が大好きな人間と大嫌いな人間に大別できると思っていて、自分がどっち側の人間か知れるだけでも良いんじゃないかなと思うんですね。

「太宰はまさしく僕のことを語っている!」とか「何言ってんだこいつ?」とまあ色々な捉え方はあると思いますが、大庭葉蔵という人物造形はいずれにせよ天才的で、やっぱり太宰は天才だなーと思う次第なのです。まあ、これは太宰が好きな僕の私見ですが。

『人間失格』は、読む度に印象が変わる本だと思います。それが自分の精神発達の、あるいは精神状況のバロメーターになることもあるでしょう。そういった意味でも、まあ中学生のどこかの時期で読んでおいて損はないんじゃないかなあと思います。結構読みやすいですしね。

(この表紙、人気あるのかな)

おわりに

なんか3冊あげてみると、普通に僕が学生時代から数年おきに何度も読み返している本なんですよね……。それだけ、青春時代に読んだ本というのは忘れがたい思い出になるものなのかもしれません。

他の人には他の人なりの青春の本があってしかるべきですし、若い人であれば、僕の頃にはまだこの世になかった本が、その人の運命の1冊になるかもしれません。

まあそれはそれで良いのですが、僕は僕で、自分に子どもができて中学生になったら、その子の見える場所にこの3冊をさりげなく置きたいなと思っています。家族に気持ち悪がられなければ良いのですが……。

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