『ルーズヴェルト・ゲーム』

不況の波と同業他社との激しい競合で存亡の危機に陥る中堅精密器メーカーの社長が、会社存亡の危機から奇跡の逆転劇を見せようと必死にもがき奮闘する姿を描いたドラマ。

半沢直樹の原作者とスタッフが再集結し、もう一度人気と話題を当てにしているのだろうが。一見した感じだと、重厚な「大人のドラマ」然としたカッコつけた面は、スペシャルドラマ『LEADERSリーダーズ』の方が近い気がした。

このドラマは、経営と野球を同時に描いていくようだが。ベタに捉えれば野球部は、会社のスピリッツ的な役割を担っていると思う(台詞を借りればイズム)。しかし主人公である社長は、野球部の廃部を辞さない構えで。同じ会社内の組織と言えど、対立してしまう関係の話を平行して描くというのが、どのような決着を迎えるのかはまだ予想できないが。野球部の方にも、唐沢寿明クラスの人を配置して、ダブル主演にしなくてよかったのだろうか。早めに二つの話に相互的影響を与えないと、どちらかが足手まといになる為、そこまでにどれだけ脱落者を出さないかが鍵になってしまう。

2つの話ともが、逆境に晒された状態からの逆転劇になりそうだが、いつものパターンであれば、ホモソーシャルな関係と熱いスピリッツが、根拠になってない根拠になるのだろう。だが、序盤で熱くなっている選手が、スローボールで三振を奪われるシーンからも分かるように、このドラマでは気持ちだけでは勝てず、頭を使って裏をかいた方が勝利するという世界観。半沢直樹の時のような、暗躍やネゴシエーションで味方を増やし、華麗な逆転を見せる展開は、このドラマでも健在だということだろう。しかし、野球パートにはマネーボールのようなロジックを求めていたので、放送直後視聴者によってその野球パートにケチが付いたのは監修の落ち度だと言える。

半沢直樹の良さは重厚なドラマでは無く、マジメな顔してギャグスレスレの嘘を押し切る、ハッタリ力だったと思うのだが。本気で社会派ドラマが見たかったら、同じ池井戸潤でもNHKの方が圧倒的に出来がいい。威勢のいい啖呵と顔相撲が楽しめれば、誰でも楽しめる痛快ストーリーが売りだった半沢直樹にマジな顔されても、いや話しはそこまで良く出来てはいないよ、という気持ちが若干顔をのぞかせてしまうので。最後までこのノリでやるのは、些か不安だ。

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